銀行が教えない!融資審査に通る会計管理の5つのポイント
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銀行が教えない!融資審査に通る会計管理の5つのポイント
中小企業や個人事業主が事業を拡大する際、融資は重要な資金調達手段です。しかし、多くの経営者が融資審査で苦戦しています。その理由の一つが、金融機関が重視する会計管理のポイントを理解していないことです。本記事では、銀行が融資審査で実際に見ているポイントと、審査に通りやすくなる会計管理の実践方法を詳しく解説します。
※本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。融資制度や審査基準は金融機関や時期により異なります。実際の融資申請の際は、各金融機関や専門家に最新情報をご確認ください。
1. 融資担当者が本当に見ている書類と審査基準
①融資審査で特に注目される書類
融資審査で特に注目されるのは、確定申告書、決算書、試算表、通帳の履歴です。これらの書類から、売上の推移、利益率、固定費の状況、借入金の返済状況、資金繰りの健全性などが判断されます。また、帳簿と通帳の内容が一致しているか、不自然な資金移動がないかもチェックされます。
金融機関の融資担当者は、決算書を短時間で診断すると言われています。短時間で事業の健全性を判断するため、一定の基準に基づいて書類を確認します。
②会計管理が不十分だと信用度が下がる
会計管理がきちんとできていない事業者は、それだけで信用度が下がってしまいます。普段から融資を意識した会計管理を行うことが重要です。急に融資が必要になってから準備を始めても、過去の数字は変えられません。
③よくある間違いは、融資が必要になってから準備を始めること
融資は、必要になってから準備を始めても間に合わないことが多いです。日頃から以下のポイントを実践することで、いざという時にスムーズに融資を受けられます。日々の記帳を習慣化し、毎月の試算表を作成すること、帳簿と通帳の整合性を毎月確認することが大切です。
2. 月次で経営数字を締める習慣をつける
①月次試算表で事業の現状をリアルタイムで把握
年に一度の確定申告だけでは、事業の現状が分からず、金融機関も判断できません。月次試算表を毎月作成することで、事業の経営状況をリアルタイムで把握できます。
※架空の例
例えば、飲食店を経営するAさんのケースを見てみましょう。月商が平均150万円、固定費(家賃・人件費・光熱費など)が100万円、変動費(仕入れ・消耗品など)が30万円の場合、月次利益は約20万円になります。これを毎月試算表で記録していれば、3か月分で60万円、半年で120万円の利益が確認でき、融資審査時に「安定した収益がある」と評価されます。
②金融機関は直近3〜6か月分の月次試算表を求める
特に日本政策金融公庫や信用金庫などは、直近3〜6か月分の月次試算表の提出を求めることが多いです。試算表がない、または数か月前のものしかない場合、「この事業者は数字を把握していない」と判断され、融資審査で不利になります。
③会計ソフトで自動化して習慣化する
会計ソフトを使えば、記帳さえ行っていれば自動的に試算表を出力できるため、大きな手間はかかりません。週に一度、または月に一度のペースで記帳を行い、月次で締める習慣をつけましょう。
3. 預金通帳の動きを説明できるようにする
①帳簿と通帳の一致が厳しくチェックされる
帳簿に記録された内容と、実際の通帳の動きが一致しているかが厳しくチェックされます。帳簿上は売上が記録されているのに入金がない、経費として計上されているのに支払いの記録がない、といった不一致があると、信頼性が疑われます。
※架空の例
具体例として、IT系フリーランスのBさんのケースを見てみましょう。帳簿には「12月15日:A社から業務委託料50万円入金」と記録されていますが、実際の通帳には「12月20日:48万円入金(源泉徴収後)」と記載されています。このような源泉徴収の処理を正しく帳簿に反映していないと、金融機関は「この事業者は税務処理を理解していない」と判断する可能性があります。
②事業用口座と個人用口座を必ず分ける
プライベートの支出と事業の支出が混在していると、融資審査で大きなマイナスになります。事業用の口座と個人用の口座は必ず分け、事業資金の流れを明確にしておく必要があります。金融機関は通帳を3〜6か月分チェックし、不自然な資金移動や使途不明金がないか確認します。
③記録が残る取引方法を選ぶ
できるだけ銀行振込やクレジットカード決済など、記録が残る方法で取引を行うことが推奨されます。現金取引がある場合でも、領収書を必ず保管し、帳簿に正確に記録することが重要です。
4. 黒字の継続性と成長性をアピールする
①継続的に利益を上げているかが重視される
一時的に利益が出ているだけでなく、継続的に利益を上げているかが重視されます。過去2〜3期分の決算書や確定申告書を提出し、利益の推移を確認されることが一般的です。
※架空の例
例えば、美容室を経営するCさんの場合、過去3期の利益は以下のようになっています
・1期目:年間利益100万円
・2期目:年間利益150万円
・3期目:年間利益180万円
このように右肩上がりの利益推移があれば、「事業が成長している」と評価され、融資審査で有利になります。一方、3期すべてが赤字、または黒字と赤字を繰り返している場合は、融資審査が厳しくなります。
②赤字でも理由が明確であれば融資を受けられる可能性はある
ただし、赤字でも理由が明確であれば融資を受けられる可能性はあります。設備投資による一時的な赤字、創業初期の赤字などは、事業計画で説明できれば理解されることもあります。重要なのは、利益がどのように推移しているかを自分で把握し、説明できることです。
③利益推移を自分で把握し説明できるようにする
売上は増えているが利益が減っている、経費が増加している、といった傾向があれば、その理由を明確にしておく必要があります。月次試算表で毎月の利益を確認し、赤字の月があれば原因を分析することで、融資審査時に説得力のある説明ができます。
5. 返済原資があることを数字で証明する
①手元資金があるかが重要
単に利益が出ているだけでなく、実際に手元資金があるかが重要になります。帳簿上は黒字でも、入金が遅れたり、大きな支払いが集中したりすると、資金不足に陥る可能性があります。
資金繰り表は、今後の入金予定と支払予定を時系列で整理した表です。
※架空の例
例えば、建設業を営むDさんが500万円の融資を希望する場合、以下のような資金繰り表を作成します:
【月次資金繰り表の例】
・4月:売上入金400万円、経費支払280万円、返済10万円 → 手元資金110万円
・5月:売上入金450万円、経費支払300万円、返済10万円 → 手元資金250万円
・6月:売上入金420万円、経費支払290万円、返済10万円 → 手元資金370万円
この表で、融資返済月10万円を含めても手元資金がマイナスにならないことを示せば、返済能力を証明できます。
②返済計画を資金繰り表に組み込む
一般的に、創業融資の返済期間は5〜10年が目安です。例えば、500万円を7年で返済する場合、月々の返済額は約6万円になります(金利を考慮しない場合)。この金額を資金繰り表に組み込んで、問題なく返済できることを示しましょう。
③資金繰り表は経営管理にも有効
売掛金の入金時期、買掛金の支払時期、固定費の支払日、税金の納付時期などを正確に把握することが重要です。資金繰り表は、融資審査だけでなく、自身の経営管理にも非常に有効なツールです。
6. 財務の安全性を示す自己資本比率を確保する
①自己資本比率が高いほど財務の安定性が高い
自己資本比率とは、総資産に対する自己資金(純資産)の割合で、この数値が高いほど財務の安定性が高いと評価されます。借入金が多すぎると、返済負担が大きく、新たな融資を受けにくくなります。
【自己資本比率の評価基準の一般的な目安】
・50%以上:優良企業として高評価
・30〜50%:安定企業として一般的な目安
・20〜30%:警戒水準、資金繰りへの不安が高まる
・10〜20%:高リスク水準、財務改善が必要
・10%未満:危険水域、融資が困難
※この基準は金融機関や業種により異なります。
※架空の例
具体的な計算例を見てみましょう。総資産2,000万円、負債1,400万円、純資産600万円の企業の場合、自己資本比率は「600万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 30%」となります。この水準であれば、中小企業としては一般的な安全ラインです。
②創業融資では自己資金は借入額の2〜3割程度が目安
創業融資の場合、自己資金は借入額の2〜3割程度が目安とされています。例えば、自己資金300万円を準備した場合、600〜900万円程度の融資が期待できる可能性があります。逆に、自己資金がほとんどなく、全額融資で賄おうとすると、審査は非常に厳しくなります。
※自己資金の目安は金融機関や事業計画により異なります。
③既存の借入金の返済状況も厳しくチェックされる
既存の借入金の返済状況も厳しくチェックされます。返済の遅延や滞納があると、新規融資はほぼ受けられません。逆に、計画通りに返済を続けていれば、金融機関からの信用が高まり、次回の融資がスムーズになります。
自己資金を貯めるためには、無駄な経費を削減し、利益を確保することが必要です。役員報酬を抑えて内部留保を増やす、設備投資のタイミングを調整するなど、戦略的な資金管理が求められます。自己資本比率30%以上を目標に、財務体質の強化を進めましょう。
7. 融資面談で信頼を得るための準備と専門家の活用
①数字を即答できれば信頼度が上がる
融資面談では、金融機関の担当者から経営状況について質問されます。その際、具体的な数字を即答できれば、信頼度が大きく上がります。「月商はいくらで、固定費がいくら、月次利益はいくら」といった数字を把握しておきましょう。
②金融機関との信頼関係を長期的に構築する
金融機関との信頼関係は、一度の融資で終わりではなく、長期的に構築していくものです。定期的に決算書や試算表を提出し、経営状況を報告することで、金融機関との関係を強化できます。
③税理士や認定支援機関のサポートを活用する
融資審査の準備を一人で行うのが難しい場合は、税理士や認定支援機関に相談することをおすすめします。税理士は、決算書や試算表の作成をサポートし、融資に有利な財務状況を整えるアドバイスをしてくれます。また、認定支援機関を通じて融資を申し込むと、金利が優遇される制度もあります。
特に、日本政策金融公庫の創業融資や、信用保証協会付きの融資では、認定支援機関のサポートが有効です。事業計画書の作成、資金繰り表の整備、面談の準備など、融資審査に必要な書類や対応をトータルでサポートしてもらえます。
④経営者自身が数字を理解することが最も重要
ただし、専門家に頼るだけでなく、経営者自身が数字を理解することが重要です。自分の事業の数字を説明できなければ、融資面談で信用を失ってしまいます。税理士のサポートを受けながらも、自分で会計の基礎を学び、経営数字を把握する習慣をつけましょう。
まとめ
融資審査に通るためには、日頃の会計管理が最も重要です。今回のポイントをまとめます。
・月次での経営数字の把握と試算表の作成
・通帳の動きの説明力と帳簿との整合性確保
・継続的な利益の確保と成長性のアピール
・返済原資の証明と資金繰り表の作成
・自己資本比率30%以上の維持(業種・状況により異なる)
・融資面談での数字の即答と専門家の活用
普段から会計管理を徹底し、いつでも融資を申し込める状態を作っておくことが、経営の安定につながります。融資は、必要になってから準備を始めても間に合わないことが多いため、日々の記帳習慣と月次試算表の作成が欠かせません。
まずは今日から、記帳の習慣化と月次試算表の作成を始めてみましょう。小さな積み重ねが、融資審査に通る確率を大きく高めます。会計管理を整えることは、融資だけでなく、事業全体の健全性を高めるための第一歩です。
専門家のサポートも活用しながら、経営者自身が数字を理解し、説明できる力を身につけることが、長期的な事業成長の鍵となります。
【重要な注意事項】
本記事の情報は2026年5月時点のものです。融資制度、審査基準、必要な自己資金比率などは金融機関や時期、業種、事業計画により大きく異なります。実際の融資申請を行う際は、ご自身で必ずご確認ください。
また、本記事中の例(AさんBさんCさんDさんの事例)は、架空のケースです。個別の状況により必要な準備や審査結果は異なりますので、ご注意ください。