仮払金と立替金の違いは?従業員の立替経費を正しく管理する方法

仮払金と立替金の違いは?従業員の立替経費を正しく管理する方法

仮払金と立替金の違いは?従業員の立替経費を正しく管理する方法

「仮払金や立替金が帳簿に残ったままになっている」

「従業員が立て替えた経費の精算が遅れている」

「誰が、何のために支払ったお金なのか分からない」

このような状態は、経理担当者にとってよくある悩みです。

仮払金や立替金は、適切に処理すれば便利な勘定科目です。一方で、内容を確認しないまま長期間残していると、会社の資産残高が不正確になったり、経費計上が遅れたりする原因になります。

ただし、ここで注意したいのは、勘定科目としての「立替金」と、従業員が会社の経費を自分のお金で立て替える「従業員の立替経費」は、お金の流れが逆であることです。

・会社が、従業員や取引先が本来負担すべき費用を一時的に支払う → 立替金(資産)
・従業員が、会社が負担すべき経費を自分のお金で一時的に支払う → 会社側では未払金(負債)として扱う場合がある

そのため、「従業員が立て替えた経費」をすべて「立替金」として処理するのは誤りになることがあります。従業員が会社の経費を立て替えた場合、会社側では通常、未払金として管理し、後日従業員へ支払います。

本記事では、仮払金と立替金の違い、従業員の立替経費との区別、未精算が起きる原因、仕訳の基本、管理方法、社内ルールの作り方までを解説します。

※本記事は2026年10月時点で確認できる情報をもとに作成しています。実際の会計処理や税務上の判断については、税理士などの専門家にご相談ください。

1.仮払金・立替金・従業員の立替経費の違い

① 仮払金とは

仮払金とは、支出した時点では、使い道や最終的な金額が確定していない場合に、一時的に使う勘定科目です。

代表的な場面は、次のとおりです。

・出張前に従業員へ旅費を渡す。
・遠方への移動費を事前に支給する。
・現場で必要になる費用を先に渡す。
・接待や会議に使う費用を概算で渡す。
・小口現金を担当者に預ける。

仮払金を支給した時点では、まだ実際の費用の内容が確定していません。そのため、通常は直ちに旅費交通費や消耗品費として処理せず、仮払金として記録します。

その後、従業員から領収書や精算書を提出してもらい、実際に使った金額を適切な勘定科目に振り替えます。

② 立替金とは

勘定科目としての立替金とは、本来は従業員や取引先などが負担すべき費用を、会社が一時的に支払った場合に使用する勘定科目です。

代表的な場面は、次のとおりです。

・取引先が本来負担すべき送料を、会社が一時的に支払う。
・取引先が支払うべき手数料を、会社が一時的に支払う。
・従業員が本来負担すべき費用を、会社が一時的に支払う。
・複数社分の費用を、一社がまとめて支払う。
・取引先の依頼で費用を一時的に負担する。

立替金は、会社自身の経費ではなく、後から従業員や取引先などに請求・回収する前提のお金です。

③ 従業員の立替経費とは

従業員の立替経費とは、従業員が会社の経費を、自分の現金や個人のクレジットカードで支払った場合を指します。

たとえば、次のようなケースです。

・従業員が交通費を自分のICカードで支払う。
・従業員が接待費を個人のカードで支払う。
・従業員が消耗品を個人で購入する。
・従業員が出張先で宿泊費を立て替える。

この場合、お金は「従業員から会社の経費」へ向かっています。会社側から見ると、従業員へ後日返すべきお金が発生します。

そのため、会社側では立替金ではなく、未払金として管理する場合があります。

④ お金の流れと会社側の主な処理

仮払金、立替金、従業員の立替経費は、お金の流れを整理すると分かりやすくなります。

場面 お金の流れ 会計上の位置づけ 会社側の主な処理
会社が従業員へ出張費を概算支給 会社 → 従業員 資産 仮払金として計上し、精算後に旅費交通費などへ振り替える
会社が取引先負担分を一時支払い 会社 → 取引先 資産 立替金として計上し、後日取引先から回収する
従業員が会社経費を立て替え 従業員 → 会社の経費 負債 経費を計上し、未払金として従業員への支払いを管理する
会社が従業員の立替経費を精算 会社 → 従業員 負債の消込 未払金を消し込み、従業員へ支払う

このように、同じ「立て替え」という言葉でも、誰が誰のために支払ったかによって、使う勘定科目と処理方法が変わります。

2.未精算が起こる原因

① 領収書の提出が遅い

仮払金や立替経費が残る最も一般的な原因の一つは、領収書や精算書の提出遅れです。

出張や営業活動から戻った後に、従業員が精算を後回しにすると、経理担当者は支出の内容を確認できません。

提出が遅れると、次のような問題が起こります。

・何の支出か思い出せなくなる。
・領収書を紛失する。
・支払日や取引先が分からなくなる。
・月次決算に間に合わなくなる。
・仮払金や未払金の残高が長期間残る。

② 精算期限が決まっていない

「できるときに精算する」というルールでは、処理が後回しになります。

精算期限を決める場合は、次のような基準を設けます。

・出張から戻った後、一定期間内に提出する。
・月末までの支出は、翌月の締め日までに提出する。
・領収書を受け取ったら、早めに申請する。
・高額な支出は、通常の精算日を待たずに報告する。

期限は会社の業務に合わせて決め、全従業員へ周知します。

③ 申請方法が統一されていない

紙の精算書、メール、チャット、口頭など、申請方法が人によって違うと、情報が分散します。

申請方法はできるだけ統一します。

・専用の経費精算書を使う。
・クラウドの経費精算システムを使う。
・領収書の添付方法を決める。
・申請先を一つにする。
・承認者を明確にする。

④ 勘定科目の判断が難しい

従業員が「この支出は何の経費か分からない」と感じると、精算申請が遅れることがあります。

よく迷う項目には、次のようなものがあります。

・会議費と交際費
・消耗品費と備品
・旅費交通費と福利厚生費
・広告宣伝費と販売促進費
・修繕費と資本的支出

勘定科目の判断に迷う場合は、従業員が無理に決めるのではなく、内容と証憑を提出し、経理が最終判断するルールにするとよいでしょう。

⑤ 個人のカードや現金で支払っている

会社のカードや法人向け決済手段が整っていないと、従業員が個人の現金やクレジットカードで支払うケースが増えます。

立替経費が増えると、次の問題が起こります。

・従業員の負担が大きくなる。
・精算漏れが起きる。
・会社の支出状況をリアルタイムで把握できない。
・領収書の提出が遅れる。
・個人利用と会社利用が混ざる。

可能な範囲で、法人カード、交通系IC、オンライン決済などを活用し、従業員の立替経費を減らすことも対策になります。

3.放置するとどうなるか

① 資産残高が不正確になる

仮払金や立替金は、貸借対照表上では資産として扱われます。

しかし、長期間残っている仮払金が、実際にはすでに使い切られている場合、帳簿上の資産と実態が一致しません。

立替金についても、すでに相手から回収されているのに帳簿に残っていると、残高が不正確になります。

② 経費計上が遅れる

仮払金を精算しないままにすると、実際に発生した旅費交通費や消耗品費などが、正式な経費として計上されません。

その結果、月次決算で次のような問題が起こります。

・当月の費用が少なく表示される。
・利益が実態より多く見える。
・部門別の経費が正しく集計できない。
・予算と実績の比較が難しくなる。

③ 月次決算が遅れる

仮払金や立替金、従業員の立替経費の内容が分からないと、経理担当者は仕訳を確定できません。

未精算の件数が多いほど、月次決算の完成が遅れます。

特に、決算月まで未精算のまま残ると、決算整理の負担が大きくなります。

④ 従業員とのトラブルが起きる

従業員が立て替えた経費の精算が遅れると、従業員が自分のお金を長期間負担することになります。

その結果、次のような不満につながる可能性があります。

・精算が遅い。
・申請方法が分かりにくい。
・誰に確認すればよいか分からない。
・提出した領収書が見つからない。
・差し戻しの理由が不明確。

精算状況を確認できる仕組みを作ることが重要です。

⑤ 不正や私的利用に気づきにくい

仮払金や立替金を長期間放置すると、私的な支出や不適切な支出を発見しにくくなります。

すべての未精算が不正というわけではありませんが、残高が長期間残っているものは、内容を確認する必要があります。

4.仮払金・立替金・未払金の仕訳

① 仮払金の支給と精算

従業員に出張費として仮払金を支給した場合、支給時点では次のように処理します。

借方:仮払金
貸方:現金または預金

この時点では、まだ実際の費用の内訳が確定していないため、旅費交通費などには振り替えません。

従業員が出張を終え、実際に使った金額が確定したら、領収書や精算書を確認します。

実際の支出が仮払金の範囲内であれば、仮払金を経費科目へ振り替えます。

借方:旅費交通費など
貸方:仮払金

実際の支出内容に応じて、旅費交通費、消耗品費、交際費などの勘定科目を使います。

② 仮払金の残金と不足分

仮払金として渡した金額より、実際に使った金額が少なかった場合は、残金を返金してもらいます。

例として、仮払金の一部を旅費交通費として処理し、残りが返金された場合は、次のような形になります。

借方:旅費交通費
借方:現金
貸方:仮払金

返金方法が現金か預金かによって、使用する勘定科目を確認します。

実際に使った金額が仮払金を上回った場合は、不足分を従業員へ追加で支払います。

借方:旅費交通費など
貸方:仮払金
貸方:現金または預金

重要なのは、精算後に仮払金の残高が残っていないか確認することです。仮払金の精算が完了すると、通常は対象となる仮払金残高を消し込みます。

③ 立替金の支払いと回収

取引先が本来負担すべき費用を会社が支払った場合は、立替金として処理します。

借方:立替金
貸方:現金または預金

その後、相手から回収した場合は、次のように立替金を消し込みます。

借方:現金または預金
貸方:立替金

立替金は、会社自身の費用ではなく、後日回収する債権として管理します。

④ 従業員の立替経費の精算

従業員が交通費や接待費など、会社が負担すべき経費を立て替えた場合は、会社側では未払金として管理する場合があります。

立て替えが発生したときの処理例は、次のとおりです。

借方:旅費交通費など
貸方:未払金

その後、従業員へ精算金額を支払ったときは、次のように処理します。

借方:未払金
貸方:現金または預金

このように、従業員の立替経費は、会社側から見ると「後日従業員へ支払うべき債務」です。

⑤ 仮払金を長期間残さない

仮払金は、最終的な処理が決まるまでの一時的な勘定科目です。

そのため、決算時点まで残っている場合は、内容を確認します。

・本当に未精算なのか。
・領収書が不足しているのか。
・従業員への返金が必要なのか。
・会社の経費として処理できるのか。
・役員や従業員への貸付に該当しないか。

内容不明のまま残し続けるのではなく、担当者や経営者へ確認しましょう。

5.未精算を防ぐ管理方法

① 精算期限を決める

精算期限は、会社の規模や業務内容に合わせて設定します。

例:

・出張終了後、決めた期間内に精算する。
・月末までの経費は、翌月の締め日までに申請する。
・高額な立替は、支出前に承認を受ける。
・期限を過ぎた場合は、上長へ報告する。

期限は就業規則、経費精算規程、社内マニュアルなどに記載すると、従業員に周知しやすくなります。

② 申請方法を統一する

紙の精算書、メール、チャット、口頭など、申請方法が人によって違うと、情報が分散します。

申請方法はできるだけ統一します。

・専用の経費精算書を使う。
・クラウドの経費精算システムを使う。
・領収書の添付方法を決める。
・申請先を一つにする。
・承認者を明確にする。

③ 管理表を作る

仮払金・立替金・未払金管理表には、次の項目を入れます。

・管理番号
・支払日
・支払者
・受取人
・取引先名
・支払内容
・支払金額
・仮払金額
・精算金額
・返金額
・追加支給額
・領収書の有無
・申請日
・承認日
・精算日
・担当者
・備考

管理表を作成すると,未精算の状況が一覧で分かります。

・誰の未精算が残っているか分かる。
・どの支出が未処理か分かる。
・提出期限を過ぎたものを確認できる。
・返金や追加支給の状況を確認できる。
・月次決算前に未処理を洗い出せる。

④ 事前承認を取り入れる

高額な出張費、接待費、備品購入などは、事前申請を取り入れます。

事前申請のメリット

・会社が支出を把握できる。
・予算を確認できる。
・私的な支出を防ぎやすい。
・仮払金の金額を適切に設定できる。

デメリット

・申請や承認の手間が増える。
・緊急の支出には対応しにくい。
・細かすぎる制度は現場で使われなくなる。

すべての少額支出に事前申請を求めるのではなく、高額な支出や例外的な支出に限定する方法もあります。

⑤ 月次決算と連動させる

月次決算の前に、仮払金・立替金・未払金の未精算一覧を確認します。

・長期間残っているもの。
・金額が大きいもの。
・証憑がないもの。
・内容が不明なもの。
・精算済みなのに残っているもの。

月次決算と連動させることで、未精算の放置を防ぎやすくなります。

まとめ

仮払金、立替金、従業員の立替経費は、いずれも一時的に貸借対照表へ計上され、後日、精算や回収などの処理が必要となる勘定科目です。

ただし、お金の流れが異なるため、同じ「立て替え」という言葉でも、使う勘定科目は変わります。

・会社が従業員へ概算で支給する → 仮払金
・会社が取引先などの負担分を一時支払う → 立替金
・従業員が会社経費を立て替える → 会社側では未払金として管理する場合がある

未精算のまま長期間放置すると、次のような問題が起こります。

・会社の資産残高が不正確になる。
・経費計上が遅れる。
・月次決算が遅れる。
・従業員との精算トラブルが起きる。
・不適切な支出に気づきにくくなる。
・決算時に過去の資料を探すことになる。

未精算を防ぐためには、次の対策が有効です。

・精算期限を決める。
・申請方法を統一する。
・領収書の提出方法を決める。
・仮払金・立替金・未払金管理表を作る。
・残高を毎月確認する。
・高額な支出は事前承認にする。
・未精算一覧を定期的に共有する。
・法人カードや経費精算システムを活用する。
・月次決算と未精算確認を連動させる。

まずは、会計ソフトに残っている仮払金、立替金、未払金の残高を一覧にしてみましょう。

そのうえで、誰の支出なのか、何の支出なのか、証憑があるのか、返金や請求が済んでいるのかを確認します。

仮払金や立替金を適切に管理すれば、経費処理の正確性が高まり、月次決算もスムーズになります。従業員の立替負担を減らし、会社のお金の流れを見える化することにもつながります。