経理を任せきりにする前に知っておきたい会計の基礎知識
目次
経理を任せきりにする前に知っておきたい会計の基礎知識
経理や会計は難しそうだからと、すべて任せきりにしている経営者は少なくありません。
しかし、会計の考え方を知らないまま経理を任せてしまうと、数字を経営に活かせなくなります。
会計は専門家のためのものではなく、経営者が判断するための道具です。
この記事では、経理を任せる前に知っておきたい会計の基本と、無理なく関わるための考え方を解説します。
1.経理を任せる前に理解しておくべき会計の役割
会計や経理は、数字が多くて難しそうだと感じる人が多い分野です。
そのため、記帳や決算などは経理に任せてしまっている経営者も少なくありません。
ただ、会計の役割を知らないまま任せてしまうと、数字を経営に活かせなくなります。
ここでは、経理を任せる前に知っておきたい会計の基本的な考え方を説明します。
(1) 会計は「数字をまとめる作業」ではない
会計と聞くと、売上や経費をまとめる作業を思い浮かべる人が多いかもしれません。
確かに数字を整理することは大切ですが、それだけが会計の役割ではありません。
会計は、経営者が判断するための材料を用意するものです。
今のやり方を続けてよいのか、何かを変えた方がよいのかを考えるとき、会計の数字がヒントになります。
・今の進め方に無理はないか
・このまま続けても問題はなさそうか
・そろそろ見直した方がよい点はないか
会計は「正しい数字を作ること」が目的ではありません。
数字を見て行動を決めるための道具だと考えると理解しやすくなります。
難しい計算を覚える必要はなく、全体の流れをつかむことが大切です。
(2) 経理と経営者では数字との向き合い方が違う
経理と経営者は、同じ数字を見ていても役割が違います。
・経理:決められたルールに沿って数字をまとめる
・経営者:その数字を見て次に何をするか考える
経理は「数字を正しく整える人」です。
一方、経営者は「数字を使って判断する人」です。
この違いを意識せずにすべて任せてしまうと、経営者が数字を見る機会そのものが減ってしまいます。
結果として、判断の根拠が感覚に偏りやすくなります。
会計は経理だけのものではなく、経営者自身のためにあるものだと理解しておくことが大切です。
(3) 会計を見ないと判断が感覚に頼りやすくなる
会計に触れない状態が続くと、判断が感覚に頼りやすくなります。
・何となくうまくいっていそう
・忙しいから今はこのままでいい
・深く考えずに決めてしまう
こうした判断は、その場では楽に感じます。
しかし後から振り返ると、なぜそう判断したのか説明できないことが増えていきます。
会計を見ていれば、判断の理由を数字で確認できるようになります。
うまくいった理由や失敗した原因を整理しやすくなります。
結果として、同じ失敗を繰り返しにくくなります。
(4) 会計を共通の話題にすると話が早くなる
会計の数字を共通の話題にできると、やり取りがスムーズになります。
・状況を数字で確認できる
・認識のズレが起きにくい
・話が長引きにくくなる
経理との会話でも、どこを見ればよいかがはっきりします。
経営では、考える時間が十分に取れない場面も少なくありません。
数字を見てすぐ判断できる状態は、経営者にとって大きな助けになります。
(5) 会計を知っても経理の仕事は減らない
会計を理解すると、経理の仕事に口を出すことになるのではないかと不安に思う人もいます。
ですが、会計を知ることと、経理の仕事を奪うことは別です。
・入力や計算などの作業は経理に任せる
・判断や方向性は経営者が考える
この役割を分けて考えることが大切です。
会計を理解する目的は、管理を厳しくすることではありません。
安心して判断できる状態を作ることが本当の目的です。
会計を理解すると聞くと、勉強しなければならないと身構えてしまう人も多いかもしれません。
しかし、専門的な知識を身につける必要はありません。
細かい計算方法やルールを覚えることよりも、数字が何を表しているのかを知ることが大切です。
数字を見る習慣が少しでも身につくと、経営に対する不安は少しずつ減っていきます。
何が起きているのかわからない状態から、状況を自分の言葉で説明できる状態に変わるからです。
会計は難しいものではなく、経営を続けるための道しるべのような存在だと考えるとよいでしょう。
2.経理を任せきりにすると起こりやすい経営上の問題
経理を任せること自体は決して悪いことではありません。
ただし会計の内容にほとんど関わらない状態が続くと経営判断にズレが生まれやすくなります。
このズレはすぐに表に出ないため問題として認識されにくい点が特徴です。
気づいたときには修正が難しくなっているケースも少なくありません。
ここでは経理を任せきりにしたときに起こりやすい経営上の問題を整理します。
(1) 数字の裏付けがないまま判断してしまう
会計を確認しない状態が続くと決断の多くが感覚頼りになります。
忙しさや雰囲気その場の流れで決めてしまう場面も増えていきます。
その結果として考え方の軸が曖昧になりやすくなります。
・何となく問題なさそうだと感じる
・今はうまく回っている気がする
・深く考える前に決めてしまう
こうした決断は一時的には楽に感じます。
しかし後から振り返ったときになぜその選択をしたのか説明できない状態になりやすくなります。
会計の数字は正解を教えるものではありません。
考え方に理由を持たせるための材料として使うことが重要です。
(2) 経営判断が感覚や経験に偏りやすくなる
過去の経験や直感は経営において重要な要素です。
ただし感覚だけに頼った考え方は環境の変化に弱いという側面があります。
市場や社内の状況は少しずつ変化していきます。
経理を任せきりにしていると今の状況を数字で確認する機会が減っていきます。
その結果として以前うまくいったやり方をそのまま続けてしまいがちになります。
・前もこの方法でうまくいった
・今回も問題ないはずだと思い込む
・変化に気づきにくくなる
感覚と数字のバランスが崩れると考え方の精度は確実に下がります。
数字を見ることで経験を活かしながらズレを修正できるようになります。
(3) 数字に違和感があっても判断できなくなる
経営をしていると何となくおかしいと感じる瞬間が出てきます。
ただし会計に慣れていないとその違和感の正体を判断できません。
違和感があっても言葉にできず行動に移せない状態になります。
・引っかかる感じはあるが理由がわからない
・忙しいので後回しにしてしまう
・深刻ではなさそうだと考えてしまう
会計は違和感を言葉にするための材料です。
数字を見慣れていない状態ではその材料を使うことができません。
小さな違和感に気づき対処できるかどうかが経営の安定につながります。
(4) 経理との会話がかみ合わなくなる
経理から説明を受けても内容が理解できず会話が止まることがあります。
質問したくても何を聞けばよいのかわからない状態になりがちです。
その結果として確認を後回しにしてしまいます。
・専門用語が多く感じる
・確認すべき点が見えない
・結局すべて任せてしまう
この状態が続くと経理とのやり取り自体が減っていきます。
会計の基本を理解していれば細かい部分まで把握できなくても問題ありません。
大枠を共有できるだけで必要な会話は成立します。
それが確認不足や判断ミスの防止につながります。
(5) 見るべき数字の優先順位がわからなくなる
会計には多くの数字が出てきます。
すべてを理解する必要はありません。
重要なのは判断に使えるかどうかです。
経理を任せきりにしているとどの数字が重要なのか判断できなくなります。
その結果として判断に直結しない数字ばかりを追いかけてしまいます。
・何を見ればよいかわからない
・数字を見ても行動に移せない
・確認すること自体が目的になる
経営者にとって大切なのは
判断に使う数字を押さえることです。
会計に少し関わるだけでも見るべきポイントは自然と整理されていきます。
それが経営全体を安定させる土台になります。
3.経営者が最低限関わるべき会計との付き合い方
会計に関わると言っても経営者がすべてを理解する必要はありません。
大切なのは経理に任せる部分と自分が関わる部分を分けて考えることです。
無理のない形で数字の内容と付き合うことで考え方と安心感は大きく変わります。
ここでは経営者が最低限意識しておきたい付き合い方を整理します。
(1) すべてを理解しようとせず判断できるレベルを目指す
会計と聞くと専門的な知識を身につけなければならないと感じる人も多いかもしれません。
しかし経営者に求められるのは専門家レベルの理解ではありません。
大切なのは判断に使えるかどうかです。
細かい計算方法や会計ルールを覚える必要はありません。
数字を見て今どんな状況なのかを大まかにつかめれば十分です。
・今は順調そうか
・無理をしていないか
・何か変えた方がよさそうか
このような視点で数字を見られる状態を目指します。
わからない部分があっても問題ありません
判断できるラインまで理解することが現実的で続けやすい関わり方です。
(2) 経理に任せてよい業務と任せてはいけない判断を分ける
経理に任せるべきなのは日々の入力や計算といった作業です。
一方で判断や方向性まで任せてしまうのは注意が必要です。
・数字をまとめる作業
・決められた処理を行う業務
・ルールに沿った記録
これらは経理に任せて問題ありません。
しかしその数字をどう受け取るかどう動くかを決めるのは経営者の役割です。
役割を分けて考えることで経理との関係もスムーズになります。
任せるところは任せる。
考えるところは自分で考える。
この線引きを意識することが大切です。
(3) 会計を見るタイミングをあらかじめ決めておく
会計は気が向いたときに見るものではありません。
見るタイミングを決めておかないと後回しになりやすくなります。
・定期的に数字を見る
・決まったタイミングで確認する
・見る習慣を作る
このようにルールを決めておくことが重要です。
毎日見る必要はありません。
無理なく続けられる頻度で十分です。
タイミングを決めておくことで数字を見ること自体が特別な作業ではなくなります。
自然に会計と向き合える状態を作ることが目的です。
(4) 数字を見るだけで終わらせず行動につなげる
会計を見て満足してしまうケースも少なくありません。
しかし見るだけでは経営は変わりません。
数字を見たあとは次に何をするかを考えることが大切です。
・続けるのか
・見直すのか
・少し調整するのか
小さな行動でも問題ありません。
行動につながってはじめて会計は意味を持ちます。
完璧な判断を目指す必要はありません。
動きながら修正する意識を持つことで会計は経営の味方になります。
(5) 会計を味方につける経営者に共通する考え方
会計をうまく使えている経営者には共通点があります。
それは会計を怖がらないことです。
・わからないことを前提にする
・完璧を求めない
・数字を避けない
会計は敵ではありません。
経営を助けるための道具です。
少しずつ関わるだけでも十分です。
会計と適切な距離感を保つことで判断に迷う時間は減っていきます。
結果として経営への不安も小さくなっていきます。
まとめ
経理を任せること自体は、経営を効率化するうえで大切な選択です。
ただし、会計にまったく関わらない状態が続くと、判断が感覚に偏り、経営のズレに気づきにくくなります。
経営者に求められるのは、会計を完璧に理解することではありません。
数字を見て状況を把握し、次にどう動くかを考えられる状態を作ることが重要です。
会計は難しいものではなく、経営を支えるための道具です。
少しずつ関わり、自分なりの見方を持つことで、判断への不安は減っていきます。
経理を任せる前に会計の基本を知ることが、安定した経営への第一歩になります。