「売上があるのにお金が足りない」を防ぐ！会計でわかるお金の流れと改善策

 

「売上はあるのにお金が足りない」。

多くの中小企業や個人事業主が直面するこの悩みは、会計の見方で解決できます。

本記事では、会計を通じてお金の流れを理解し、資金を増やすための実践的な方法をわかりやすく紹介します。

1. なぜ「売上があるのにお金が足りない」のか？

「売上は伸びているのに、なぜか通帳の残高が増えない」
そんな悩みを持つ中小企業や個人事業主は少なくありません。
これは、会計上の利益と、実際の現金が同じではないためです。

⑴なぜ「利益」と「お金」は別ものなのか

会計での「利益」は、次の式で計算されます。

売上 − 費用（仕入や経費など）＝ 利益

この利益は「儲け」を示す数字ですが、実際にお金が手元にあるとは限りません。
たとえば、商品を販売しても「売掛金（後払い）」であれば、入金はまだ先です。
一方で、仕入や家賃、人件費の支払いはすでに発生しています。

つまり、帳簿上は黒字でも、現金が出ていく時期と入ってくる時期にズレがあるため、お金が減ってしまうことがあります。

⑵「黒字倒産」はこのズレが原因

黒字なのに倒産してしまう会社があります。
それが「黒字倒産」です。

たとえば、次のようなケースです。

・売上は伸びているが、取引先からの入金が2か月後。

・一方で、仕入先への支払いは翌月。

・結果として、帳簿上は利益が出ているのに、現金が不足して支払いができない。

このように、「利益」と「現金の動き」は時間差があります。
経営者がこの違いを理解していないと、資金繰りに行き詰まる危険があります。

⑶「利益＝現金」ではない理由

では、なぜ利益が出ていても現金が増えないのでしょうか。
主な理由は次の3つです。

①売上は計上しても、入金が後になる
　→ 売掛金やクレジット決済など、現金化が遅れる。

②費用はすぐ支払われる
　→ 仕入、外注費、家賃、人件費などは即時に出金。

③投資や税金でお金が減る
　→ 設備購入や納税も、利益には含まれない現金支出。

これらが重なると、「利益はあるのにお金が減る」という現象が起こります。

⑷「タイミングのズレ」が最大の落とし穴

経営において最も大切なのは「お金の入出金のタイミング」を把握することです。
次のようなズレが発生しやすいポイントを知っておきましょう。

①売上の入金が遅い→請求書の支払いが月末締め翌月払い。

②仕入れの支払いが早い→材料費などは現金や即支払い。

③設備投資の支出が重なる→開業や新規事業で現金が一気に出ていく。

④税金や社会保険の支払い時期を忘れている→予想外の支出になる。

このように、お金の流れには「時間差」があります。
会計上の利益を見て安心していると、実際の資金繰りで苦しくなることがあります。

⑸「現金主義」と「発生主義」の違い

会計には2つの考え方があります。

①現金主義→お金の出入りがあったときに計上する方法。

②発生主義→売上や費用が発生した時点で計上する方法。

多くの会社は「発生主義」で決算書を作ります。
そのため、実際の入金がまだでも、売上として記録されます。
これが、会計上の数字と現金残高のズレを生む原因になります。

⑹「お金が減る」3つの具体的なタイミング

では、どんな場面で現金が減るのかを整理しましょう。

①仕入や経費の支払い
　商品や材料を仕入れたとき、支払いが先行することがあります。
　販売がまだでも、現金は出ていきます。

②設備投資や新規事業の立ち上げ
　パソコンや什器などの購入、店舗改装費などは大きな出費になります。
　これらは「資産」として計上されるため、費用には一度に反映されません。
　しかし、現金は確実に減ります。

③税金・社会保険の支払い
　決算で利益が出れば法人税がかかります。
　また、翌期の社会保険料なども現金で支払う必要があります。
　利益が出るほど、納税で現金が減ることもあります。

⑺「お金の流れ」を意識することが第一歩

会計の数字を見るときは、「利益」だけでなく「現金の動き」もセットで考えましょう。
たとえば次のような視点が大切です。

①売上の入金時期を確認する

②支払い予定を一覧で管理する

③先々の資金残高をシミュレーションする

こうした意識を持つだけで、「お金が足りない」状態を未然に防ぐことができます。
利益よりも、「お金がいつ入って、いつ出るか」を把握することが経営の基本です。

2. 会計で読み解く「お金の流れ」→キャッシュフローの仕組み

売上や利益は増えているのに、手元の現金が思ったほど残らない。
そんな疑問を解く鍵が、「キャッシュフロー」という考え方です。

キャッシュフローとは、会社や事業のお金の出入りを整理し、
「お金がどこで生まれ、どこで消えていくのか」を数値でつかむ仕組みです。

損益計算書が収益と費用のバランスを示すのに対し、
キャッシュフローは現金の流れそのものを映し出します。

⑴キャッシュフローとは何か

キャッシュフロー＝現金の流れ。
つまり、会計の視点から「お金が動いた瞬間」に注目する考え方です。

ここで重要なのは、利益とキャッシュフローは目的が違うということです。

利益は「会計上の成果」を示す数字。

キャッシュフローは「実際の現金の動き」を追うもの。

たとえば、どの取引が現金を増やし、
どの支出が資金を減らしているかを知ることで、
経営の呼吸を数値で捉えることができます。

⑵キャッシュフローは3つの活動に分かれる

会社のお金の動きは、大きく3つに分類されます。
それぞれの役割を理解することで、
「お金がどこで増減しているか」が見えてきます。

①営業活動によるキャッシュフロー

→本業で得たお金の流れです。商品の販売やサービス提供で得た入金、
仕入や人件費などの支出を含みます。この部分がプラスであれば、事業が安定していると判断できます。

②投資活動によるキャッシュフロー

→将来の成長に向けた投資のためのお金の動きです。
機械の購入、店舗の改装、新しい事業への支出などがここに含まれます。
マイナスであっても、将来に向けた投資であれば健全なケースもあります。

③財務活動によるキャッシュフロー

→借入金や返済、出資、配当金の支払いなど、
資金調達に関するお金の動きです。
銀行からの融資を受けるとプラス、返済するとマイナスになります。
企業の資金繰りや財務戦略の状況を反映します。

この3つの流れを見れば、
「どこでお金を稼ぎ、どこに使っているか」が一目で分かります。

⑶キャッシュフローが見えると経営判断が変わる

キャッシュフローを理解すると、数字の読み方が変わります。

たとえば、利益が出ていても、
投資で多額の支出をすれば現金は減ります。

逆に、赤字でも借入で資金が増えていれば、
現金残高はプラスになることもあります。

つまり、会計の「利益」だけでは経営の実態はつかめません。
お金の流れを把握することで、
資金繰りの危険信号を早めに察知できるようになります。

⑷キャッシュフローを管理するための基本

お金の流れを見える化するには、
次の3つの方法が基本です。

①資金繰り表を作る
→月ごとの入出金を整理し、現金残高の推移を確認する。

②キャッシュフロー計算書を読む
→営業・投資・財務の3つの活動を比較して、バランスをつかむ。

③会計ソフトを活用する
→自動で現金の動きをグラフ化し、初心者でも状況を把握しやすい。

キャッシュフローは、会社の「お金の健康状態」を示す指標です。
数字を追うだけでなく、流れを見る意識を持つことで、
安定した資金運営が可能になります。

次の章では、このキャッシュフローを実際に改善し、 お金を増やすための具体策を紹介します。

3. 今日からできる！お金を増やす4つの改善策

会計の数字を理解しても、行動につながらなければ意味がありません。
ここでは、今日から実践できる「お金を増やす3つの改善策」を紹介します。

どれも難しい専門知識はいりません。
日々の経営や家計にすぐに役立つ、基本的で効果の高い方法です。

⑴支出を「減らす」ではなく「整える」

お金を増やす第一歩は、無駄を減らすこと。
ただし、闇雲に削るのではなく、支出のバランスを整える意識が大切です。

たとえば、次のような見直しが効果的です。

①固定費を点検する→家賃・通信費・サブスクなど、毎月発生する支出を洗い出す。

②必要経費と浪費を分ける→仕事の成果につながる出費は残し、そうでないものを減らす。

③支払い方法を統一する→経費や仕入れの支払いを口座やカードで一元化し、流れを可視化する。

単に「減らす」のではなく、お金の使い道を整理することが目的です。
こうすることで、利益の残り方が変わり、現金が増えやすくなります。

⑵収入を「安定化」させる

お金が増えない原因の多くは、「収入の波」が大きいことにあります。
月によって売上が極端に上下すると、支出を計画的に管理できません。

そこで意識したいのが、収入の安定化です。

たとえば、次のような工夫があります。

①継続契約や定期販売を増やす→顧客が固定化すると、毎月の収入が読みやすくなる。

②前受け・サブスク型の仕組みを導入→サービスの一部を定額で提供することで、現金が先に入る。

③複数の収益源を持つ→本業にプラスして、関連事業やオンライン販売などを組み合わせる。

収入の流れを安定させると、資金繰りのストレスが減ります。
また、融資の審査や新規取引の信頼性も高まります。

⑶「先読み」で資金を守る

お金が足りなくなるのは、急な支払いに備えていないからです。
だからこそ、「先読み」する習慣が重要です。

特に意識すべきは次の3点です。

①資金繰り表をつける
　→今月・来月の入金と支出を見える化し、
　どの時期にお金が足りなくなるかを把握します。

②納税や賞与など突発支出を予定に入れる
　→税金やボーナスは毎月の費用には入らないため、
　事前に積み立てておくことが大切です。

③「予備資金」を別口座で管理する
　→いざというときに使える現金を、
　通常の運転資金とは分けておくと安心です。

この「先読み」ができると、資金ショートのリスクを大きく減らせます。
会計は過去を見るものですが、資金繰りは未来を守る道具です。

⑷節税と融資を攻めの姿勢で考える

節税や融資という言葉に「防御的なイメージ」を持つ人も多いですが、
実は、これらはお金を増やすための「攻めの手段」にもなります。

①節税は使うための戦略に変える
　→経費を増やすことだけが節税ではありません。
　社員教育、設備投資、共済加入など、
　未来の利益を生む支出を“合法的に経費化”する方法を考えます。

②融資は信用を形にするチャンスと捉える
　→銀行は数字を見て会社を評価します。
　キャッシュフローが整い、計画が明確な会社ほど融資が受けやすくなります。
　資金調達の目的を明確にすれば、返済以上のリターンを得ることも可能です。

節税も融資も、「守り」ではなく「未来への投資」。
正しい知識を持つことで、手元のお金をより効率的に増やせます。

お金を増やすために特別な才能は必要ありません。
必要なのは、数字を整理し、流れを整え、少し先を読む習慣です。
その積み重ねが、安定した経営と資金のゆとりを生み出します。

まとめ

お金の流れを理解することは、数字を扱うスキルではなく「経営の感覚」を養うことです。

売上・費用・利益だけを見るのではなく、
「お金がどこから入り、どこへ流れていくか」を常に意識する。
それだけで、資金繰りの不安はぐっと軽くなります。

支出の整理、収入の安定、先読みの習慣、そして節税や融資の戦略。
どれも特別な才能はいりません。
小さな改善の積み重ねが、結果として大きな現金の余裕を生み出します。

会計の目的は「数字を並べること」ではなく、
お金を動かし、未来をつくること。
今日からできる一歩を踏み出し、安定した経営とゆとりある資金運用を手に入れましょう。