売上と利益ってどう違うの?~はじめての会計の見方~

売上と利益ってどう違うの?~はじめての会計の見方~

売上と利益ってどう違うの?~はじめての会計の見方~

 

「売上」と「利益」って、言葉はよく聞くけど…。実はその違い、はっきり説明できますか?「売上が多い = 儲かってる」と思っていたら大間違い!なんてことも。この記事では、会計初心者の方でもスッと理解できるように、「売上とは何か」「利益にはどんな種類があるのか」「実際の企業ではどうなっているのか」などを、わかりやすくご紹介していきます。会計の基礎知識があるだけで、ニュースの見え方や仕事での会話もガラッと変わりますよ。

 

1.「売上」とは?まずは言葉の意味から理解しよう!

はじめて会計や経理にふれると、「売上」や「利益」という言葉がたくさん出てきますよね。 特に「売上」は、ニュースや企業の決算発表などでもよく耳にする単語です。でも、「売上って結局何なの?」と聞かれると、意外と正確に答えられない方も多いのではないでしょうか?この記事では、「売上」という言葉の意味やイメージを、かみ砕いてご説明します。売上の基本を押さえることで、ビジネスの全体像がぐっと見えやすくなります。まずは身近な例から理解を深めていきましょう!

 

(1)売上とは「お客さんからの総収入」のこと

まず、一番シンプルに言うと、「売上」とはお客さんから受け取ったお金の総額のことです。例えば、あなたがもしカフェを経営しているとしましょう。1杯500円の珈琲を1日に100杯販売した場合、その日の売上は以下の通りです。
 【計算式】500円 × 100杯 = 50,000円
この50,000円が「売上」です。ここで大切なのは、まだこの時点では「利益」ではないということ。この50,000円の中には、コーヒー豆代、スタッフの人件費、家賃、水道光熱費など、様々な「経費」が含まれていないからです。

 

(2)「売上」と「利益」の違い

よくある誤解は、「売上が多い = たくさん儲かっている」というイメージです。でも実際には、売上が大きくてもコストがかさめば赤字になることもあります。例えば、同じカフェでも売上が50,000円、経費が45,000円だった場合、残る利益は5,000円です。逆に、売上が30,000円でも、経費が10,000円なら、利益は20,000円。このように、売上はあくまで「入ってきた総額」であり、そこから経費を引いたものが「利益」です。

 

(3)売上は「事業規模」のバロメーター

企業の「売上高」は、その会社の規模感を示す重要な数字です。例えば、「売上1,000億円企業」と聞くと、「大企業だな!」というイメージが湧きますよね。これは、売上が大きい = 多くのお客さんと取引がある、たくさんの商品やサービスが動いているという証拠だからです。ただし、繰り返しになりますが「売上が大きい」=「儲かっている」ではないので注意しましょう。本当に儲かっているかどうかを知りたい場合は、「利益」の項目を見る必要があります。

 

2.「利益」っていくつも種類があるの?実はこんなにある!

「利益」と聞くと、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか?「儲け」「黒字」「会社が得たお金」…。そんなふうにざっくりとしたイメージを持っている方が多いかもしれません。でも、実は会計の世界では「利益」と一口に言ってもいくつもの種類があるんです。この記事では、初めて会計用語にふれる方でもわかりやすいように「利益」の種類とその違いについて解説します!これを読めば、決算書やビジネスニュースでよく出てくる「粗利益」「営業利益」「経常利益」「純利益」といった言葉がスッキリ理解できるようになりますよ。

 

(1)そもそも「利益」って何?

まず最初に、「利益」とは何かを簡単に整理しましょう。利益とは、「売上から経費を引いた残りのお金」のことです。ただし、「どこまでの経費を引いたのか?」によって利益の種類が変わります。これが「利益がいくつも種類がある理由」です。

 

①粗利益(売上総利益)

まず、一番最初に登場するのが「粗利益(あらりえき)」です。「売上総利益」とも呼ばれます。これは、「売上」から「原価(仕入れコスト)」を引いた利益のことです。
 【計算式】粗利益 = 売上高 − 売上原価
例えば、あなたが1本100円で仕入れた商品を200円で販売した場合、
・売上高 → 200円   ・仕入原価 → 100円   ・粗利益 → 100円
つまり、粗利益は「商品を売ることでどれだけ儲けが出たか」を表す数字です。

 

②営業利益

次に出てくるのが「営業利益」です。これは、粗利益からさらに「販売費」や「管理費」といった「会社の運営コスト」を引いた利益です。例えば、以下のような経費がここで引かれます。
 ・広告宣伝費   ・人件費(社員の給料など)   ・家賃   ・水道光熱費
 【計算式】営業利益 = 粗利益 − 販管費(販売費、管理費)
つまり、営業利益は「本業でどれだけ稼げているか」を示す指標です。

 

③経常利益

さらに次は「経常利益(けいじょうりえき)」です。これは、営業利益に「本業以外の収益」と「本業以外の費用」を加減したものです。例えば以下のような項目が追加されます。
 ・営業外収益受取利息、有価証券運用益など
 ・営業外費用 → 支払利息、為替差損など
 【計算式】経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
つまり経常利益は、「本業+資産運用や財務活動など、会社の通常活動すべての利益」というイメージです。

 

④税引前当期純利益(特別利益・特別損失含む)

経常利益の次に登場するのが「税引前当期純利益」です。ここではさらに「特別利益」や「特別損失」といった、一時的で例外的な収益や費用を加減します。例えば、
 ・特別利益 → 土地の売却益、大型の臨時収入(例:保険差益)など
 ・特別損失 → 災害による損失、大規模リストラ費用など
これらを加減したものが「税引前当期純利益」です。

 

⑤当期純利益(最終利益)

最後が「当期純利益」、いわゆる「最終利益」です。これは、その期の「税金を払った後に最終的に会社に残る利益」です。
 ★売上高 → 粗利益 → 営業利益 → 経常利益 → 税引前当期純利益 → 当期純利益
この「当期純利益」は、株主への配当や内部留保(会社に残すお金)の原資になります。ビジネスニュースなどで「〇〇社、純利益が過去最高」などと言われるときは、通常この「当期純利益」のことを指しています。

 

(2)利益の種類は「利益の段階」を表している

ここまで読むと、「なんでこんなに種類があるの?」と感じた方もいるかもしれません。でもこれらはすべて、「利益ができるまでのステップ」を段階ごとに分けて見える化しているだけなんです。つまり、
 ☆商品を売って儲かったか?
 ☆本業でしっかり稼げているか?
 ☆資産運用なども含めて会社全体でどれだけ利益が出たか?
 ☆最終的にいくら残ったのか?
という視点で、利益の種類ごとにチェックポイントがあるということです。

 

3.実際の企業事例で学ぶ!売上と利益の違いを体感しよう

すでにお伝えしたように、「売上が大きい=儲かっている」とは限りません。実際には、売上が何千億円もあるのに、最終的な利益はごくわずかという企業も存在します。一方で、売上はそれほど多くなくても、効率よく利益を出している企業もあります。ここでは、そんな実際の企業を取り上げながら、「売上」と「利益」の違いを数字とともに体感していただきましょう。

 

(1)スーパーやコンビニ業界 ~売上は巨大、でも利益率は低い~

まず代表例として、「食品スーパー」や「コンビニ業界」があります。例えば、大手スーパーやコンビニチェーンは、年間の売上高が何千億円、何兆円にも達します。しかし、その利益率は非常に低いことで有名です。

【なぜ利益が小さいのか?】
理由は以下の通りです。
 ・食品や日用品は「薄利多売」のビジネスモデルだから
 ・競争が激しく、値下げ合戦になりやすい
 ・賞味期限管理、物流コスト、人件費などのコストがかかる
大手コンビニチェーンの場合、営業利益率が2〜3%程度ということも珍しくありません。つまり、100円売っても利益は2〜3円しか残らないということです。

 

(2)航空業界 ~売上は高くてもコストが莫大~

次に、航空会社も「売上は大きいのに利益が小さい業界」の代表格です。航空券1枚あたりの単価が高いため、売上高はとても大きくなります。しかしその分、以下のようなコストがかかります。
 ・燃料費   ・航空機リース費   ・空港使用料   ・メンテナンス費用   ・人件費(パイロット、客室乗務員など)
特に燃料価格が高騰するとすぐに利益が圧迫されます。例えばコロナ禍の2020年度、多くの航空会社が売上があっても大幅赤字になりました。固定費が高すぎる業界の典型例です。

 

(3)ITベンチャー企業 ~売上は少ないのに利益率が高い~

一方で、売上が小さくても利益率が高い会社もあります。その代表が、IT系ソフトウェア企業やクラウドサービス提供会社(SaaS)です。これらの会社は、初期開発コストは大きいものの、 一度サービスが出来上がれば追加コストはほとんどかかりません。つまり、「売れれば売れるほど利益が出やすい」構造です。実際、あるSaaS企業は年間売上が数十億円程度でも、営業利益率が30%を超えることもあります。
 【理由】
 ・人件費などはあるが、製造原価がほぼゼロ
 ・在庫リスクもない
 ・サービスの追加提供にほとんどコストがかからない

 

(4)ECモール運営企業 ~売上が少なくても儲かる「手数料ビジネス」~

もうひとつ面白い例が、ECモール運営会社です。例えば楽天やAmazonなど、ECプラットフォームを運営している会社は、「売上高」にあたるのは「出店者から受け取る手数料収入」だけです。つまり、ECサイト全体で数兆円の流通があっても、運営企業の売上はその数パーセントしかありません。しかし、その少ない売上でもしっかり利益が出る場合があります。なぜなら、プラットフォーム型ビジネスは利益率が高いからです。

 

(5)売上だけを見ると「本当の姿」が見えない理由

これまでの事例からわかるように、売上だけを見てもその会社の実力や健全性はわかりません。なぜなら、
 ・売上が多くても、コストが大きすぎれば赤字になる
 ・売上が小さくても、高利益率なら黒字になる
本当に見るべきなのは、「利益率」「固定費」「変動費」といった、「利益構造」です。これこそが、会社の経営の強さやビジネスモデルの質を表す部分なのです。

 

4.おわりに

今回の記事を通して、「売上」と「利益」はまったく違う意味を持つこと、そしてその違いが会社の経営状況を判断するうえで、とても重要であることがお分かりいただけたかと思います。大切なのは「売上が多いから安心」とか、「売上が少ないからダメ」と単純に考えないこと。 その裏にある「コスト構造」や「利益率」を見ることで、会社の本当の実力や今後の成長性が見えてきます。これからはニュースや企業の決算発表を見るとき、ぜひ「利益はどうなっているんだろう?」という視点を持ってみてください。会計の知識が少しあるだけで、日常のビジネスニュースや株式投資の判断材料もぐっと面白くなりますよ!