経理代行の料金はどのように決まるのか 費用を削減する方法とは

目次
中小企業やベンチャー企業においては、自社で経理スタッフをそろえることが難しいのが現状です。
経理担当者には会計、税務、社会保険などの専門知識が必要であり、このような人材は大企業に集中する傾向にあります。少子化が進む我が国において、規模の小さいベンチャー企業や中小企業が経理担当者を採用することは、困難でしょう。
一方、自社で経理担当者を養成するには、多大の労力と時間を費やす必要があります。多忙をきわめる個人事業主や中小企業にとっては、負担が大きすぎるといえるでしょう。
そのため、ベンチャー企業や中小企業では、経営者自らまたは、その家族が経理事務を担当するケースが多く見受けられます。また、経理兼任の社員一人任せになっている場合もあります。経理兼任社員は、メインの仕事をこなしながら、経理を兼任しているのが一般的です。
そのようなときに、経理代行サービスは、たいへん有効な手段です。では、経理代行の相場はどのくらいなのでしょうか。
経理代行の料金は、業務内容や企業の規模、業者ごとの料金体系によって異なります。ここでは、経理代行の料金体系、相場、料金を抑えるポイントについて詳しく説明します。
そもそも経理代行とは
経理代行サービスは、「自社の経理担当者の代わりに経理業務を受託する外注サービス」と言えます。
経理代行の業務の範囲は、日々の仕訳入力から帳簿作成、請求書事務、給与計算、振込作業、決算書作成、税務申告など、会社の経理業務を請け負ってくれるアウトソーシングサービスです。
依頼できる主な業務は、次のとおりです。
1.記帳
2.給与計算
3.請求管理
4.支払い管理
5.年末調整
実際には、依頼者のニーズに応じて柔軟に業務範囲が設定される場合が多いですが、依頼することができる業務の内容は、経理代行を担う会社によって異なる可能性があります。
経理代行の料金体系
経理代行では、主に以下のような料金体系が採用されることが一般的です。
(1) 月額固定制
毎月一定の料金を支払う仕組みです。業務量が一定である企業に適しています。たとえば、月次決算や定期的な経費精算、給与計算などの標準業務をカバーする場合に相応しい料金体系です。
(2) 作業量ベース(従量制)
業務量や取引件数に応じて料金が変動します。業務量が変動する企業に適しています。取引数、仕訳件数、請求書発行数などの単価で料金が決定されます。
(3) パッケージプラン
基本業務(記帳代行、給与計算など)をセットにして提供されるプランです。個人事業主や小規模企業、新設法人向けに、経理業務全般をまとめて月額○万円で提供するケースなどが見受けられます。
(4) オプション料金
基本プランに含まれない特定の業務に対して追加料金が発生します。年次決算や税務申告、コンサルティング業務などがあります。
経理代行のケース別の料金相場
(1)記帳代行
記帳代行の料金は、「仕訳数」が目安になります。
1仕訳あたり100円前後(80円~120円)が一般的な料金とされているため、仕訳数が少ない場合は数千円程度で対応できるでしょう。
ただし、業者によっては最低料金が数万円で設定されていることもあるので、注意が必要です。
(2)給与計算
給与計算では、1人あたり月額1,000~2,000円が目安とされています。
(3)決算書の作成や決算申告
決算書の作成や決算申告などの業務は、経理アウトソーシング業者に依頼する場合は約5~20万円、会計事務所に依頼する場合は約15~25万円が相場とされています。
経理代行の料金の決まり方
(1)経理代行の料金を決める要素
①ボリューム
依頼業務のボリュームに応じて料金が設定されているケースです。
例えば記帳代行を依頼する場合、契約期間内に記帳を行う仕訳の件数によって料金が決まります。同様に、振込代行であれば振込を行う件数、支払代行であれば支払を行う件数など、対応を依頼する件数に応じた料金を支払います。「月間仕訳数100件までは1万円」などのように、契約期間の単位とあわせて料金が算出される場合もあります。
経理代行を依頼する企業の社員数によって料金が異なる業務も存在します。社員数に応じて対応件数が変動する給与計算や年末調整手続きなどの業務については、社員数の大小で料金が分けられるケースがあります。
②企業規模
資本金額や売上高が、基本料金に影響を与えます。
資本金額や前年の売上高の金額が多いほど基本料金も高くなります。
③業種や特殊な経理処理
一般に、海外取引や手形による取引、製造原価による計算、部門会計など、特殊な経理処理が必要となる場合も追加料金がかかります。
また、業種によっては特殊な経理方法が求められる場合があります。建設業、不動産業や金融業などが対象となります。これらの業種は、追加料金が発生すると考えて間違いありません。
(2)料金体系
①パッケージ化されたサービス
経理業務全般の代行を依頼する場合は、記帳業務に加えて、請求書発行、支払い・振込、給与計算など、基本となる経理業務を組み合わせて依頼することになります。
経理業務全般の代行を依頼する場合は、基本となる経理業務がパッケージ化された経理代行サービスを利用することをお勧めします。
経理業務の種類別に個別に料金を設定している代行業者もありますが、いくつかの個別のサービスを組み合わせて利用するよりも、パッケージ化されたサービスの方がコスト面でお得になることが多いですからです。
パッケージの内容は経理代行業者によって様々ですが、仕訳数や従業員数、希望する納期によってもパッケージ料金は異なるので、必ず詳細を確認しましょう。
パッケージに含まれていない業務を依頼する場合は、オプションで追加費用を支払うことになります。
②オプション料金
幅広い業務の代行を依頼したいとき、経理以外の業務も発注したいとき、代行を依頼する業務の件数が膨大であるとき、緊急を要するときなどは、オプション料金が必要となります。
具体的には、給与計算、予算管理や資金繰り表の作成、部門別会計、特殊な会計処理、証憑書類のファイリングなどがオプションとなるケースが多いです。
オプションサービスを利用するのにかかるコストは、目安として次のようなものがあります。
給与計算では、1人あたり月額1,000~2,000円、資金繰表などの作成で5,000円~1万円が目安とされています。
決算申告まで依頼する場合、決算書類の作成のみにするのか、申告書類の提出まで全ての代行を依頼するのかで料金が異なります。
経理代行サービスを利用する際のメリット
(1)コスト削減
経理担当者を配置するとなると人件費がかかります。募集から採用までの活動費、採用後の給与、通勤費、雇用契約によっては社会保険料(会社負担分)、などのコストが発生します。
その他、人事労務管理として適正な休暇、公平な人事評価、福利厚生の提供、人材育成の観点での外部研修などの教育、ハラスメントなどのコンプライアンス対応などが生じます。
経理代行サービスに委託した場合、委託した業務範囲や企業規模にもよりますが年間数十万円で済む場合もあります。人事労務管理に手間をかけたくない、コストを削減したいという場合は、経理代行サービスを利用することをお勧めします。
(2)本業に集中
事業主、会社経営者が経理実務を行っていたり、現場作業担当と経理担当が兼任であったり、経理業務の負担が大きく、本業に集中できないといった状況が継続的に続いている場合があります。
経理代行サービスに委託すれば経理業務の負担が大幅に軽減され、本来業務に集中できます。
(3)専門知識にもとづくサービスが受けられる
会計・税務知識にもとづく「会計処理」、「節税対策」、「税務申告」を自社独自で進めるのはとても難しいことでしょう。専門的な知識を持つ経理代行サービスへ委託することにより記帳代行のみならず、日々の税務相談、会社にとって有利な節税対策などアドバイスを受けることができます。
また、税法など頻繁に行われる法改正に対しても、すばやく具体的に対応してもらえます。
経理代行サービスを利用する際のデメリット
経理代行サービスでのメリットがある反面、デメリットもあります。
(1)情報漏洩リスク
経理アウトソーシングをするこということは、社内の個人情報や機密情報をそのアウトソーシング先に提供することになります。その際には当然ながら漏洩リスクがあります。
(2)社内に経理事務のノウハウが残らない
長年の経理事務経験者ともなれば、その会社特有の知識やノウハウが育成されていると思われますが、経理代行サービスに経理業務を依頼するとそれらのノウハウが社内で継承されないこととなり、従業員の経理スキルの育成もできません。
(3)外部とのコミュニケーションの問題
外部(経理代行業者)の経理担当者との連携が必要になるため、情報共有や意思疎通に時間がかかる場合があります。不十分なコミュニケーションがミスやトラブルの原因となることもありうるので、注意が必要です。
(4)緊急対応が困難
予期せぬトラブルや突発的な税務調査が発生した場合、外注先に頼ることになるため、即座に対応できない可能性があります。経理資料、たとえば領収書・請求書などを経理代行業者に預けている場合、特に注意が必要です。
(5)業者への依存リスク
経理代行サービスに長期間依存すると、次のような問題が生じる可能性があります。
①切り替えコストの発生
他の業者に変更する際や、経理業務を再び内製化する際に、引き継ぎやシステムの調整に多大なコストと時間がかかる場合があります。
②契約終了時のリスク
委託先が倒産したり、契約を打ち切った場合に、業務が滞る可能性があります。
経理代行サービスの選び方
(1)依頼したい業務に対応しているか
経理代行サービスの対応業務や範囲は、委託先によって異なります。まずは自社で依頼したい業務内容をすべて洗い出し、依頼する範囲を明確に決めておきましょう。
(2)実績・信頼度
経理代行会社の実績や評判の良さは重要です。導入事例などを見ておきましょう。導入社数の多さなども判断材料になります。
さらに、口コミ・評判を調べておくことも必要です。
(3)サポート体制は充実しているか
経理業務には、トラブルが発生することがあります。このようなときに、迅速に対応してくれるサービス体制が整っているか確認しておくことも重要です。また、業務量が変動した場合にも柔軟に対応できるかという点も確認しておきましょう。
(4)セキュリティ対策
経理代行サービスを利用するには、自社の経理に関する情報や従業員の個人情報を、共有することになります。そのため、セキュリティ対策が徹底されていない代行会社に依頼してしまうと、情報漏洩に繋がるリスクが高まります。
契約する前に、セキュリティポリシーの詳細を確認するとともに、プライバシーマーク(Pマーク)などの認証の有無についても確認しておく必要があります。
経理代行の費用をできるだけ削減する方法
経理をアウトソーシング会社に業務委託するにあたっては、中小企業や個人事業主にとっては、なるべく安く、質の良い委託先に依頼したいものです。
そのため、下記の項目をあらかじめ調査しておくことをお勧めします。
(1)経理業務の所要時間を調べる
現在、経理にどの程度の時間を要しているのかを調べておくことが重要です。
経理業務のボリュームを把握しておくことで、料金レベルの予測が可能となり、交渉力が高まります。
(2)現在の経理業務フローを変更しデジタル化する
経理代行の料金を下げるには、属人化していた業務フローを簡略化する必要があります。
例えば、エクセルで行っていた請求業務をソフトウェアに置き換えるなど、代行作業が行いやすいように変更する必要があります。
(3)クラウドソフトを利用する
クラウド会計ソフトやクラウド請求ソフトなどを利用すると、これらのソフトは自動化が進んでいるため時間がかからず、情報もリアルタイムで共有されるため、代行料金の引き下げに有効です。
(4)提出資料の状態に配慮する
経理代行を依頼する際、領収書や請求書・現金出納書などの資料を紙の状態で渡すより、デジタルデータで渡す方が、安くできる可能性があります。
また、紙で渡す場合も、何も手をつけていない状態で渡すと代行業者側で振り分け作業が必要になるため、追加費用が発生する可能性があります。
無理のない範囲で提出する資料を時系列にまとめたり、項目ごとに分類してすぐに参照できる状態にしておくと、委託先の作業工数が減るためコスト削減が見込めます。