インボイス制度の少額特例とは?1万円未満のインボイスは保存しなくても大丈夫?

インボイス制度の少額特例とは?1万円未満のインボイスは保存しなくても大丈夫?

インボイス制度の少額特例とは

少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるという制度です。

インボイス制度においては、原則的にインボイスを保存しなければ仕入税額控除ができません。しかし、この少額特例が適用されるケースでは、税込1万円未満の商品などを購入した際に、要件を満たしている事業者であれば、インボイスの保存がなくても一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。

インボイス制度への対応に伴う小規模事業者の事務負担を軽減するためにどうにゅうされました。

少額特例の帳簿記載要件

前述のとおり、少額特例を適用する場合はインボイスの保存は不要ですが、「一定の事項」を記載した帳簿を保存することが必要です。この一定の事項とは、次のものをいいます。

  1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率対象の場合、その旨)
  4. 課税仕入れに係る支払対価の額

少額特例の適用対象者

少額特例の適用対象者は、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者です。

ただし、特定期間における課税売上高については、納税義務の判定における場合と異なり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額による判定はできません。

 

「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。

 「特定期間」とは、個人事業者については前年1月から6月までの期間をいい、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。

税込1万円未満の判定単位

少額特例は、一取引当たり税込1万円未満の課税仕入れが対象となります。この判定基準は、一取引ごとに毎回適用されます。商品ごとの金額ではなく、一取引ごとの金額である点に注意が必要です。

「税込1万円未満の課税仕入れ」に該当するか否かについては、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定するため、課税仕入れに係る一商品ごとの金額により判定するものではありません。
したがって、3,000円の商品と8,000円の商品を同時に購入した場合は合計11,000円ですので、少額特例の対象とはなりません。

少額特例の適用期間

少額特例は、令和5年10月1日から令和11年9月30日(2023年10月1日から2029年9月30日までの期間が適用対象期間となります。

なお、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う課税仕入れが適用対象となりますので、たとえ課税期間の途中であっても令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、少額特例の対象とはなりません。

令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、仕入税額控除を受けるためには、原則として、インボイスと一定の事項を記載した帳簿の保存が必要となりますので注意しましょう。

国税庁参考サイト

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/02.htm

免税事業者から仕入れた場合も少額特例の対象になる

少額特例においては、仕入れ先が課税業者、免税業者のいずれでも対象になります。たとえ免税事業者から仕入れた場合でも、取引金額が税込1万円未満であれば対象となります。少額特例は、仕入れ先が課税業者か免税業者かで扱いが変わることはありません。

少額特例の注意点

①令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間に限定

少額特例には、適用期間が決まっています。少額特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。課税期間の途中でも、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、少額特例の対象外となります。

②一定規模以下の事業者に限定

少額特例の対象事業者は、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者です。

特定期間の売上高の算定においては、納税義務の判定とは異なり、給与支払額の合計を基準にすることは認められていませんので注意が必要です。

③一取引当たり税込1万円未満であること

インボイス少額特例の適用対象について特に留意すべきなのが判定単位です。この特例は税込1万円未満の課税仕入れが対象となりますが、判定基準は商品単体ではなく取引全体の額となるので注意しましょう。

インボイス交付の義務は免除されない

少額特例が適用されている取引であっても、取引相手からインボイスの交付義務が免除されるわけではありません。インボイスの交付を求められた場合は、インボイス事業者はインボイスを発行する必要があります。少額特例は対象となるインボイスの保存が免除される制度であり、発行義務が免除される制度ではないため注意が必要です。

 

執筆者:税理士 渕上 肇