知らないと損する!~会計と税務の違いを簡単解説~

知らないと損する!~会計と税務の違いを簡単解説~

知らないと損する!~会計と税務の違いを簡単解説~

 

ビジネスを運営するうえで、「会計」「税務」は欠かせない重要な業務です。しかし、これらの違いを正しく理解していないと、誤った経営判断をしたり、必要以上の税金を支払ったりするリスクがあります。本記事では、会計と税務の違いをわかりやすく解説し、経営者が知っておくべき重要なポイントを紹介します。会計と税務を正しく理解し、賢い経営を目指しましょう!

 

1.そもそも「会計」と「税務」って何が違うの?

(1)会計の役割とは?

会計の主な目的は、会社のお金の流れを正しく把握し、経営判断に役立てることです。具体的には、以下のような業務があります。

【財務会計】会社の財務状況を外部の関係者(投資家、取引先、金融機関など)に伝えるための会計
【管理会計】経営者が会社の業績を分析し、事業戦略を立てるための会計

例えば、「今年の売上は〇〇円で、利益は△△円だった。」といった情報を整理し、会社の成長戦略を考えるのが会計の役割です。また、会計には「会計基準」と呼ばれるルールがあり、日本では「企業会計基準」や「国際会計基準(IFRS)」などが使われています。

 

(2)税務の役割とは?

税務の目的は、税法に従って正しく税金を計算し、納税を行うことです。企業が支払う主な税金には、以下のようなものがあります。

【法人税】会社の利益に対してかかる税金
【消費税】商品の販売やサービスの提供に対して発生する税金
【住民税・事業税】地方自治体に納める税金

税務は「法律」に基づいて行われるため、会社がどれだけ利益を上げたかに応じて、適切な税金を支払わなければなりません。ただし、税務のルール(税法)は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を把握しておく必要があります。

 

2.会計の目的は「経営判断」、税務の目的は「納税」!

(1)会計の目的は「経営判断」

①会計とは?

会計とは、会社の経営状況を記録・整理し、正確な財務情報を提供することを目的とした仕組みです。会計の情報をもとに、経営者や投資家、銀行などが会社の状況を分析し、適切な判断を行います。

 

②なぜ経営判断に必要なのか?

経営者が適切な意思決定をするためには、会社のお金の流れや利益状況を正確に把握することが不可欠です。例えば、次のような場面で会計情報が役立ちます。

 ☆新しい事業を始めるかどうかを判断する
 → 過去の売上や利益のデータを分析し、投資に見合うリターンがあるかを判断する。

 ☆コスト削減の方針を決める
 → どの費用がかかりすぎているのかを把握し、無駄を削減する。

 ☆銀行から融資を受ける際の資料作成
 → 財務諸表(決算書)を作成し、金融機関に会社の健全性を示す。

このように、会計は経営の意思決定をサポートするためのツールなのです。

 

(2)税務の目的は「納税」

①税務とは?

税務とは、税法に基づいて正しく税金を計算し、申告・納税を行うことです。企業は利益を上げると税金を支払う義務があるため、適切な申告が求められます。

 

②なぜ税務が重要なのか?

会社が適正な納税を行わなければ、以下のようなリスクが発生します。

 ・税務調査で問題が発覚し、追徴課税を受ける

 ・税務上の優遇措置(控除・減税)を適用し忘れ、不要な税金を支払う

 ・納税額を誤ることで、キャッシュフローが悪化し、資金繰りが苦しくなる

企業の税務処理を適切に行うことで、法律に則った適正な納税ができるだけでなく、無駄な税負担を減らすことにもつながります。

 

(3)会計と税務の違いを具体例で解説

☆減価償却の違い

例えば、100万円の設備を購入した場合、会計と税務では異なる処理が必要になります。

 【会計の考え方】「この設備は5年使うから、毎年20万円ずつ費用として計上しよう。」

 【税務の考え方】「税法上、この設備は4年で減価償却するルールがあるから、毎年25万円ずつ計上しよう。」

このように、会計と税務ではルールが異なるため、計算結果も変わってくるのです。

 

3.会計ルール(会計基準)と税務ルール(税法)の違いとは? 

(1)そもそも会計基準と税法とは?

まず、それぞれのルールの目的を整理してみましょう。

項目 会計ルール(会計基準) 税務ルール(税法)
目的 企業の財務状況を正しく示す 正しく納税額を計算する
適用対象 企業の経営判断や外部報告 税務申告や納税
規定する内容 収益・費用の計上基準、財務諸表の作成方法 税金の計算方法、申告・納付ルール
主な基準 企業会計基準(日本)、IFRS(国際会計基準)、
US GAAP(米国基準)など
法人税法、所得税法、消費税法など

 

(2)会計基準と税法の違い

① 収益や費用の認識タイミングが異なる

会計では、売上や費用を発生主義(発生した時点)で計上します。一方、税法では、現金主義や税務上のルールに基づいて、計上時期が決まることがあります。

☆売上の計上

 【会計基準】「商品を出荷した時点」で売上計上

 【税法】「代金を回収した時点」で売上計上(中小企業の簡易課税制度など)

特に、法人税の計算では、売上や費用の計上時期が税法の規定により変更されることがあり、会計上の利益と税務上の利益に差が生じることがあります。

 

② 減価償却の方法が異なる

企業が機械や設備などの資産を購入した場合、その費用を一括で計上するのではなく、耐用年数にわたって少しずつ費用として計上することを「減価償却」といいます。しかし、会計基準と税法では、減価償却の計算方法や耐用年数のルールが異なります。


☆100万円の機械を購入し、5年間使う場合

 【会計基準】経営判断に基づいて、耐用年数や減価償却方法を選択可能(定額法・定率法など)

 【税法】法人税法に定められた耐用年数・償却方法を使用(例えば法定耐用年数が4年なら、税務上は4年で償却)

そのため、会計上の減価償却費と税務上の減価償却費が異なることがあり、結果として会計上の利益と税務上の利益にズレが生じます。

 

③ 損金(経費)として認められる範囲が異なる

企業が支出した費用のうち、税務上「損金」として認められるかどうかにはルールがあります。会計では経費として計上できても、税法上は損金にならないケースがあります。

☆交際費の取り扱い

 【会計基準】会社の業務に関連する接待・飲食費などは、全額経費として計上できる
 【税法】交際費は一定の金額までしか損金算入できない(中小企業なら年間800万円まで)

このように、税法では一部の経費を損金として認めないルールがあるため、税務調整が必要になります。

 

(3)会計と税務の調整(税務調整)

上記のように、会計と税法のルールが異なるため、会計上の利益と税務上の利益には差が生じます。この差を調整するのが「税務調整」です。税務調整では、会計上の利益をもとに、税法のルールに従って「課税所得(税務上の利益)」を計算します。

☆税務調整の流れ

 ①会計上の利益を算出する(財務諸表をもとに計算)
 ②税法のルールに基づいて調整(損金不算入の交際費を加算、税務上の減価償却を適用 など)
 ③課税所得を確定し、法人税を計算する

 

4.経営者が知っておくべき会計と税務のポイント 

(1)経営者が押さえておくべき会計のポイント

① 損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)を理解する

会計の基本となるのが、「損益計算書(P/L)」と「貸借対照表(B/S)」です。
 ☆P/L(損益計算書) → 売上や利益を把握するためのもの(会社の「儲け」がわかる)。
 ☆B/S(貸借対照表) → 資産と負債のバランスを把握するためのもの(会社の「財務体質」がわかる)。

経営者は毎月のP/LとB/Sをチェックし、利益が出ているか、資金繰りに問題がないかを確認することが重要です。

 

② キャッシュフローを意識する

「利益が出ているのに、資金が足りない」ということはありませんか?これは、会計上の利益と実際のキャッシュ(お金の流れ)が違うためです。例えば、売上があっても売掛金(未回収の代金)が多いと、手元の現金が不足することがあります。経営者は、P/LやB/Sだけでなく、キャッシュフロー(資金繰り)をしっかり管理することが大切です。

 

③ 数字をもとに経営判断をする

「なんとなく経営する」のではなく、会計データを活用して経営判断を行うことが成功の鍵です。例えば、
 ・売上が伸びているが、利益率はどうか?
 ・固定費(家賃・人件費など)が高すぎないか?
 ・資金繰りは問題ないか?
これらを定期的にチェックし、経営戦略に活かすことが重要です。

 

(2)経営者が押さえておくべき税務のポイント

① 法人税の計算方法を理解する

法人税は、「会計上の利益」に基づいて計算されるわけではなく、「税務上の利益(課税所得)」をもとに算出されます。会計上の利益と税務上の利益には、「税務調整(税法上のルールに従った修正)」が必要になるため、税理士と相談しながら適正な申告を行いましょう。

 

② 節税対策を考える

節税とは、法律の範囲内で適切に税金を減らすことです。例えば、

 ☆役員報酬の設定 → 役員報酬は経費になるため、利益を調整することが可能。
 ☆設備投資のタイミング → 減価償却を活用して利益を調整。
 ☆中小企業向けの税制優遇 → 交際費の損金算入枠や特別控除の活用。

ただし、無理な節税は税務リスクを高めるため、税理士と相談しながら進めることが重要です。

 

③ 消費税の計算と納付に注意する

消費税は、売上時に顧客から預かった税金を納税する制度ですが、仕入れや経費で支払った消費税との差額を納める仕組みになっています。

 ☆年間売上1,000万円以下の事業者は「免税事業者」となり、消費税の納税義務がない(ただし、インボイス制度に注意)
 ☆課税事業者は、「原則課税」か「簡易課税」かを選択できる

消費税の計算ミスは大きな負担につながるため、しっかり管理しましょう。

 

5.おわりに

会計は「経営判断」のため、税務は「納税」のためにあります。それぞれの目的やルールを正しく理解し、適切に活用することが、会社の成長や安定した経営につながります。

【会計のポイント(経営判断に役立てる)

 ★損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)を定期的にチェックし、会社の財務状況を把握する

 ★キャッシュフロー(資金繰り)を意識し、黒字倒産を防ぐ

 ★会計データをもとに経営戦略を立て、利益率や固定費を管理する

 

【 税務のポイント(適正な納税をする)

 ★法人税は会計上の利益と異なるルールで計算されるため、税務調整が必要

 ★節税対策を活用し、適切に納税額をコントロールする(役員報酬、設備投資のタイミングなど)

 ★消費税の納付・計算ミスに注意し、適切な管理を行う(インボイス制度など最新の税制改正に対応)

 

会計と税務を混同してしまうと、経営判断を誤ったり、必要以上の税金を支払ってしまったりするリスクがあります。「税務のために会計をする」のではなく、「経営判断のために会計を活用し、税務にも対応する」という意識を持つことが大切です。経営者は、会計と税務の違いを正しく理解し、財務管理を適切に行うことで、無駄な税金を減らし、会社を成長させることができます。ぜひ、会計と税務を正しく活用し、賢い経営を目指しましょう!