決算書を読むだけで終わらせない|初心者でもできる利益と融資力を高める決算書の作り方
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決算書を読むだけで終わらせない|初心者でもできる利益と融資力を高める決算書の作り方
決算書や会計と聞くと、難しそうだと感じる方も多いのではないでしょうか。
実際、最初からすべてを理解しようとする必要はありません。
まずは、会社のお金がどのように動き、どこが重要なのかを知るだけで十分です。
決算書は、単なる結果報告の資料ではなく、考え方次第で設計できるものです。
利益の出方や、金融機関からの評価は、日々の判断の積み重ねによって大きく変わります。
本記事では、会計初心者の方でも全体像をつかめるように、決算書の考え方、利益の見方、そして融資で本当に見られているポイントを解説します。
細かい部分が分からなくても構いません。
まずは、何が大切なのかを知ることから始めてみてください。
1.決算書は結果ではなく設計できるもの
⑴決算書は自動的に出来上がるものではない
決算書は日々の取引を入力すれば自動的に完成する書類ではありません。
数字は事実をそのまま写したものではなく判断の積み重ねによって形になります。
売上や費用は発生します。
しかしそれをいつ計上するかやどのように扱うかは人が決めています。
この選択の違いが最終的な決算書の数字を左右します。
同じ取引であっても結果は変わります。
・今期の売上として計上するか
・当期の費用として処理するか
・将来に分けて処理するか
これらはすべて経営判断の延長です。
何も意識せずに経理に任せていると理由を説明できない決算書になります。
決算書は単なる集計結果ではありません。
経営判断が集約された設計図です。
この前提を理解すると決算書は後から確認するものではなく事前に考えて作るものに変わります。
⑵日々の経営判断が数字に反映される仕組み
決算書の数字は決算期直前の調整だけで決まるものではありません。
実際には日々の経営判断の積み重ねが大きく影響します。
たとえば次のような判断です。
・契約を結ぶタイミング
・支払い条件の決定
・外注にするか内製にするかの選択
これらはすべて会計処理の前段階にある判断です。
判断が変われば売上や費用の出方が変わります。
経営と会計は切り離せません。
数字は経営判断の結果として表れます。
数字だけを見て評価すると原因が見えなくなります。
判断と数字をセットで考えることが決算書を活かす基本です。
⑶同じ取引でも数字が変わる理由
同じ内容の取引でも決算書の数字が変わることがあります。
理由は会計処理に複数の選択肢があるからです。
支出があった場合でも扱い方は一つではありません。
・当期の費用として処理する
・将来に分けて処理する
どちらを選ぶかで当期の利益は変わります。
これはルール違反ではありません。
重要なのは正解を探すことではありません。
自社の状況や目的に合った処理を選んでいるかです。
選択肢があることを知らずに任せきりにすると意図しない数字になります。
⑷経理任せにすると起きやすいズレ
経理を任せること自体は問題ありません。
問題なのは判断まで含めて丸投げすることです。
経理は与えられた情報をもとに処理を行います。
経営判断の背景までは自動的に反映されません。
その結果として次のような状態になります。
・意図しない利益水準
・想定と違う数字
・説明できない決算書
経営者がすべてを理解する必要はありません。
ただし数字に影響する判断の場面だけは関与が必要です。
それだけで決算書の精度は大きく変わります。
⑸設計視点を持つ経営者の共通点
決算書を活用できている経営者には共通点があります。
数字を結果ではなく過程として見ていることです。
次の点を必ず振り返ります。
・なぜこの利益になったのか
・どの判断が影響したのか
これを運や景気で終わらせません。
日々の判断と数字を結びつけて考えます。
さらに共通しているのは数字を見るタイミングです。
決算期だけでなく月次や途中経過でも数字を確認します。
想定とずれていればその時点で判断を修正します。
結果が出てから反省するのではありません。
途中で軌道修正する前提で数字を使います。
この設計視点を持つだけで決算書の役割は変わります。
決算書は過去を確認する資料ではなく次の判断に使う道具に変わります。
ここが読むだけで終わる状態との決定的な違いです。
2.利益を意識した決算書の作り方
⑴売上と費用の計上タイミングの考え方
利益は売上から費用を差し引いた結果として計算されます。
しかし、実際の利益は金額の大小よりも、売上や費用をいつ計上しているかによって大きく変わります。
売上は入金された時点で必ず計上されるものではありません。
契約内容や業務の完了状況など、一定の条件を満たした時点で計上されます。
費用についても、支払ったタイミングではなく、発生したタイミングで計上されます。
この考え方を理解していないと、次のような状態になります。
・売上は伸びているのに利益が出ない
・利益は出ているのに資金が増えない
これは経営が悪いわけではありません。
計上タイミングを把握していないことが原因です。
利益を意識した決算書を作るには、数字の大きさではなく、計上されたタイミングを見ることが重要です。
⑵利益を安定させる費用管理の視点
利益を出そうとすると、費用を減らすことに意識が向きがちです。
しかし、単純な削減は必ずしも正解ではありません。
重要なのは削ることではなく、費用を管理することです。
すべての費用を一律に減らしてしまうと、事業の成長を止めてしまう可能性があります。
そのため、まず費用の性質を整理する必要があります。
・売上に直接つながる費用
・将来の成長につながる費用
・効果が分かりにくい費用
この区分を意識することで、判断の基準が明確になります。
費用管理とは我慢することではありません。
使うべき費用と見直すべき費用を区別することです。
この視点を持つことで、利益は一時的ではなく、安定して出やすくなります。
⑶節税と利益確保のバランス
利益が出ると税金が発生します。
そのため、税金を抑えたいという気持ちから、利益を減らす判断をしてしまうことがあります。
しかし、節税を優先しすぎると別の問題が生じます。
利益が少ない決算書は、会社の体力が弱く見えます。
金融機関からの評価にも影響します。
重要なのは、節税と利益確保のバランスです。
・税金を抑えるという視点
・会社の力を示すという視点
この両方を同時に考える必要があります。
短期的な税負担だけを見て判断すると、将来の選択肢を狭めてしまいます。
中長期の経営を見据えて、どの程度の利益を残すかを考えることが重要です。
⑷月次管理が決算書の質を左右する理由
決算書は一年分の取引をまとめた結果です。
しかし、一年分をまとめて確認しても、問題に気づいた時には手遅れになることがあります。
そこで重要になるのが月次管理です。
月ごとに数字を確認することで、ズレを早い段階で把握できます。
・利益が想定と合っていない
・費用が増えすぎている
・売上の動きに違和感がある
こうした変化は、月次で見なければ分かりません。
決算書の質は、決算期の作業で決まるものではありません。
日常的に数字を見ているかどうかで決まります。
月次管理を行うことで、利益を意識した判断が日常的にできるようになります。
⑸数字を放置しないためのチェック習慣
数字は見なければ意味がありません。
一度確認して終わりにしても、経営には活かせません。
重要なのは、継続して数字を見る習慣です。
難しい分析は必要ありません。
最低限、次の点を確認するだけでも十分です。
・売上は想定どおり推移しているか
・利益は確保できているか
・費用が増えすぎていないか
これを定期的に確認します。
ズレがあれば原因を考えます。
必要であれば判断を修正します。
この積み重ねが、利益を意識した決算書を作ります。
数字を放置しないことが、結果として会社のお金を守ることにつながります。
3.融資に強い決算書を作るための考え方
⑴金融機関が決算書で見ているポイント
金融機関は、決算書を見て利益の金額だけで融資判断をしているわけではありません。
最も重視されるのは、将来にわたって返済を継続できるかどうかです。
売上や利益が安定して出ているかを確認します。
一時的に利益が出ていても、それだけで評価が上がることはありません。
再現性があるかどうかが重要になります。
特に確認されやすいのは次の点です。
・利益が継続して出ているか
・売上や費用に大きな変動がないか
・特定の取引や要因に依存していないか
決算書は、数字の良し悪しを測る資料ではありません。
返済能力を判断するための資料です。
この前提を押さえておくことが重要です。
⑵利益より重視されるケースとは
融資では、必ずしも利益が最優先されるわけではありません。
黒字であっても、評価が伸びないケースはあります。
代表的なのは次のような場合です。
・一時的な取引で利益が出ている
・利益はあるが資金繰りが不安定
・数字の理由を説明できない黒字
金融機関は、将来も同じ状態が続くかどうかを見ています。
そのため、結果としての利益よりも、その背景や構造が重視されます。
利益の大きさだけで判断されるわけではないことを、あらかじめ理解しておく必要があります。
⑶自己資本と借入のバランス
融資を考えるうえで重要なのが、自己資本と借入のバランスです。
自己資本は、これまで積み上げてきた利益の蓄積であり、会社の体力を示す数字です。
自己資本が少ないと、返済余力が低いと見られやすくなります。
一方で、自己資本が一定程度あれば、経営の安定性が伝わります。
借入が多いこと自体が、すぐにマイナス評価になるわけではありません。
重要なのは、借入に対して自己資本がどうなっているかです。
この関係を意識して決算書を見ることが、融資を考えるうえでの基本になります。
⑷説明できる決算書が評価される理由
融資の場面で最も重視されるのは、決算書の数字そのものではありません。
その数字を、経営者自身が説明できるかどうかです。
金融機関は、決算書を見ながら次の点を確認しています。
・なぜこの数字になったのか
・一時的な要因か、継続するものか
・今後はどうなる見込みか
これらを説明できない場合、数字が良くても評価は上がりません。
逆に、数字が突出していなくても、内容を整理して説明できれば、前向きに評価されることもあります。
重要なのは、会計的に正しい説明ではありません。
経営としてどう判断し、どんな結果になったのかを、自分の言葉で話せるかどうかです。
経理任せにして決算書の内容を把握していない状態では、説明はできません。
説明できない決算書は、金融機関にとって不安材料になります。
決算書は提出するための書類ではなく、対話のための資料です。
この認識を持つことが、融資に強い決算書を作るうえで最も重要なポイントです。
⑸融資を見据えた日常管理の考え方
融資に強い決算書は、決算前の対策だけで作れるものではありません。
日常の数字管理の積み重ねによって形作られます。
特別なことをする必要はありません。
次の点を意識するだけで十分です。
・月次で数字を確認する
・大きな変動があれば理由を整理する
・将来の見通しを考えながら判断する
この習慣があれば、決算書の内容に一貫性が生まれます。
一貫性のある数字は、説明しやすく、評価にもつながります。
日常管理の延長線上に、融資に強い決算書があります。
まとめ
決算書は、単に数字を確認するための資料ではありません。
どのような判断をしてきたのかを説明するための道具です。
利益は、金額の大きさだけで決まるものではありません。
売上や費用をどのタイミングで計上するかによって結果は大きく変わります。
そのため、決算書は結果として受け取るものではなく、日々の判断によって形が決まるものだと考える必要があります。
特に融資の場面では、数字の良し悪し以上に説明できるかどうかが重視されます。
なぜこの数字になったのか。
今後どのように事業を進めていくのか。
これらを自分の言葉で伝えられるかどうかが評価につながります。
決算書は、最初から完璧に理解する必要はありません。
分からない部分があっても問題ありません。
決算書を見る視点を持ち、数字と向き合う意識を持つことが第一歩です。
その積み重ねが、経営判断や融資の場面で大きな力になります。