ゼロから学ぶ経理入門~その15~ 初心者のための『諸掛り』徹底解説

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ゼロから学ぶ経理入門~その15~ 初心者のための『諸掛り』徹底解説
こんにちは。
簿記3級を勉強していると、「諸掛り(しょがかり)」という言葉が出てきて、ん?これ何?と立ち止まってしまう方も多いかもしれません。
「仕入れた商品は〇〇円、でも運送料が別にかかった…。」
「売った商品を相手先まで送ったけど、その送料ってどう処理するの?」
そんなときに出てくるのが、この「諸掛り」という考え方です。この記事では、簿記初心者の方にもわかりやすく、「諸掛り」の基本を解説します!まずは、ざっくりとしたイメージからつかんでいきましょう!
1.そもそも諸掛りってなに?
(1)「諸掛り」ってなに?
諸掛りを一言でいうと、商品を仕入れたり売ったりするときに、本体価格とは別にかかる費用のことを指します。たとえば、商品を2,000円で仕入れたとします。でもその商品を運んでもらうために、運送料が500円かかったとしたら、 実際にその商品を手に入れるためには 2,500円 必要だったということになりますよね。この 運送料500円 が「諸掛り」です。
(2)諸掛りの具体例
・運送料 → トラックや配送会社に支払う費用
・保険料 → 商品の運搬中の事故などに備える費用
・荷造費 → 梱包などの準備にかかる費用
・通関料 → 輸入商品の通関時にかかる費用
(3)諸掛りのキホンは「目的」と「誰が負担するか」
諸掛りは、「商品を移動させたり保護したりするためにかかる費用」。そして、それを誰が払うのか(=負担するのか)によって、仕訳の仕方も変わってきます。
キーワード | 意味 |
仕入諸掛り | 商品を仕入れるときにかかる追加費用 |
売上諸掛り | 商品を売るときにかかる追加費用 |
自社負担(自己負担) | 費用を自分の会社が支払う場合 |
相手負担 | 相手(仕入先や得意先)が支払う場合 |
(4)初心者がまず覚えるべきこと
①諸掛りとは「商品をやりとりする時にかかる追加費用」のこと
②商品の代金とは別に考えるけれど、場合によっては「仕入」や「売上」の勘定に含める
③誰が負担するか(自社か相手か)で仕訳が変わる!
この3つをまず押さえておくと、次のステップ(仕訳問題など)がスムーズになります。
2.仕入諸掛りは誰の負担?
簿記3級の勉強を進めていると、「仕入諸掛り」という言葉が出てきます。
「商品を買っただけじゃなくて、送料や保険料もかかるのはわかるけど…。」
「それって仕訳ではどう処理するの?」
そんな疑問を持っている方、安心してください!この記事では、「仕入諸掛り」が自分の会社(=自社)で負担する場合と、相手(=仕入先)が負担する場合とで、仕訳がどう変わるのかを丁寧に解説していきます。
(1)仕入諸掛りを自社が払った場合
これがもっとも基本的なパターンです。
☆例題
商品10,000円を仕入れ、運送料1,000円を自社で支払った。この仕訳は、次のようになります。
(借方)仕入 11,000 / (貸方)現金 11,000
商品代(10,000円)+運送料(1,000円)=11,000円を「仕入」として処理します。
【ポイント】
・諸掛りは仕入の一部とみなす → よって、「仕入」勘定に含めてOK
この方法は、簿記3級ではとてもよく出てくる基本形です。
(2)仕入諸掛りを相手が払った場合(=代金に含まれている)
次に、「仕入先が送料などを負担してくれた場合」について考えてみましょう。たとえば、商品の価格はそのまま10,000円。でも、実際には仕入先が送料を負担してくれている場合があります。つまり、「運送代込みで納品された」パターンですね。
☆例題
商品10,000円を仕入れたが、運送料1,000円は仕入先が負担してくれた(代金に含まれている)。この仕訳は、次のようになります。
(借方)仕入 10,000 / (貸方)現金 10,000
自社では運送料を負担していないので、「仕入」は純粋な商品代金のみでOKです。
【ポイント】
・仕入諸掛りが、仕入代金に含まれているかを確認する
・負担していないなら、その分は「仕入」に含めない
(3)よくある混乱ポイント → 「立替払い」の場合
ここで少し応用編ですが、「仕入諸掛りを一時的に自社が立て替えたけれど、あとで仕入先に請求する」パターンもあります。この場合、最初に支払ったときは「立替金」として処理し、のちに相手に請求する形になります。
☆例題
商品10,000円を仕入れた。運送料1,000円は一時的に自社が立て替えたが、あとで仕入先に請求する予定。この仕訳は、次のようになります。
(借方)仕入 10,000 / (貸方)現金 11,000
立替金 1,000
→ 後日、1,000円分の請求処理がされます。
(4)仕入諸掛りの負担者で仕訳はこう変わる!
パターン | 仕訳例(借方) | ポイント |
自社が費用を負担した場合 | 仕入(本体+諸掛り) | 諸掛りを「仕入」に含める |
相手が費用を負担した場合 | 仕入(本体のみ) | 諸掛り分は含めない |
自社が立て替えた場合(あとで請求) | 仕入+立替金 | 諸掛りは一時的に「立替金」で処理 |
3.売上諸掛りが発生したら?
簿記3級で「仕入諸掛り」を理解した方が、次につまずきやすいのが「売上諸掛り」です。仕入諸掛りと似ているようで、実はちょっと考え方が違います。この記事では、商品を売るときに発生する費用(=売上諸掛り)について、「自分(売る側)が負担する場合」と「相手(買い手)が負担する場合」に分けて、わかりやすく解説していきます!
(1)売上諸掛りってなに?
まず、言葉の意味から確認しましょう。売上諸掛りとは、商品を売るときにかかる追加費用のことです。たとえば、こんな費用が該当します。
・発送時の運送料(宅配便など)
・保険料(輸送中の破損に備える)
・荷造費(梱包など)
つまり、「商品は売ったけど、それをお客様のもとへ届けるためにかかった費用」が「売上諸掛り」です。
(2)売上諸掛りを自社が払った場合(=自社負担)
☆例題
商品30,000円を売上げ、発送にかかった運送料800円は自社が負担して現金で支払った。この仕訳は、次のようになります。
(借方)現金 30,000 / (貸方)売上 30,000
発送費 800 現金 800
【ポイント】
・自社が負担した送料などは、「発送費」や「荷造運賃」などの費用として処理します
・これは売上とは別物。なので、「売上」に含めずに記録します
(3)売上諸掛りを相手が払った場合(=相手負担)
☆例題
商品30,000円を売上げたが、運送料800円はお客様(相手)が負担した。つまり、相手が運送会社に直接支払った。この仕訳は、次のようになります。
(借方)現金 30,000 / (貸方)売上 30,000
→ この場合、会社側は運送料を一切負担していないので、「発送費」は発生しません。
(4)もう一つのパターン → 送料をいったん立て替えた場合
商品30,000円を売上げ、運送料800円を一時的に自社が立て替え、後日相手からもらう予定。この仕訳は、次のようになります。
(借方)現金 30,000 / (貸方)売上 30,000
立替金 800 現金 800
→ このように「立替金」として処理します。
(5)実務的な視点から見ると…
実際の商取引では、「送料込み」か「送料別」かが明確に記載されています。
・送料込み(当社負担) → 発送費や荷造費として処理
・送料別(相手負担) → 送料に関する費用は記帳不要、もしくは立替処理
簿記3級の問題文でも、「送料をこちらが支払った」や「相手が負担した」などと記載されているので、よく読み取ることが大事です!
4.【論点】なぜ売上に送料が含まれているのに、発送費を別途で仕訳するのか?
簿記3級では、
・商品売上:10,000円(この中に送料500円が含まれている)
・発送費:500円(自社が負担)
という場合、
(借方)売掛金 10,000 / (貸方)売上 10,000
発送費 500 現金 500
というように仕訳されます。しかし、なぜ売上に送料が含まれているのにもかかわらず、別途発送費を仕訳するのかが、いまいちピンと来ない方もいるでしょう。この記事では、その考え方をできるだけ分かりやすく、伝えていこうと思います。
(1)簿記の考え方
簿記では、企業の「お金の流れ」を明確に記録していくことが大切です。たとえば、商品をお客様に販売した場合、その販売によって得たお金(収益)と、その商品を届けるためにかかった費用(支出)は、それぞれ別の性質を持っています。これらをしっかり分けて記録することで、企業が本当はいくら儲けているのかを正しく把握することができます。
(2)売上に送料が含まれている場合
たとえば、あなたが雑貨を販売していて、お客様に「送料込みで10,000円です。」と伝えたとします。この中には商品代9,500円と、送料500円が含まれていると考えられます。ここで重要なのは、「お客様から10,000円受け取った」という事実と、「そのうち500円はお客様に商品を届けるために宅配業者に支払った」という事実を分けて考えることです。
(3)売上と費用は違う「性質」
・売上(収益) → 商品やサービスを提供することで得られた収入、会社の儲けの元になります
・発送費(費用) → 売上を上げるために必要だった支出、収益を得るためのコストです
このように、売上と発送費では性質が異なるため、一緒に処理してしまうと経営成績が分かりにくくなるのです。
(4)仕訳での扱い
簿記では、以下のように記録します。
①お客様から10,000円を受け取る → 【売上10,000円】
②発送費500円を自社で負担 → 【荷造運賃500円】
これによって、売上10,000円は「収益」、荷造運賃500円は「費用」としてそれぞれ帳簿に記録されます。もしこれを「売上9,500円、費用なし」としてしまうと、本来の売上高が低く見えてしまい、将来的に売上の分析や経営判断がズレてしまう恐れがあります。
(5)実際の利益(もうけ)を正しく把握するために
たとえば、同じく10,000円で売上げたとしても、発送費が自社負担なのか、お客様負担なのかで利益は変わります。簿記ではこれを明確に分けておかないと、あとで「この商品は利益が出ているのか?」「どれくらいコストがかかったのか?」という分析ができなくなってしまいます。
5.おわりに
簿記において、「諸掛り」とは、商品を仕入れたり売ったりする際に、本体価格とは別にかかる追加費用のことです。例えば、商品の仕入れ時にかかる運送料や保険料、荷造費などが「諸掛り」に該当します。これらの費用は、商品の価格に含まれることもあれば、別途自社負担として支払うこともあります。
「仕入諸掛り」と「売上諸掛り」は、誰がその費用を負担するかによって仕訳が異なります。自社負担の場合はその費用を仕入れや売上の費用として計上し、相手が負担する場合は、その分を含めない場合もあります。また、立替払いをした場合は「立替金」として一時的に処理し、後で相手から請求します。
特に、売上に送料が含まれている場合でも、発送費は別途処理する必要があります。なぜなら、売上(収益)と発送費(費用)は性質が異なるからです。収益は「得られるお金」であり、費用は「支出」としてそれぞれ記録されるべきです。これにより、実際の利益を正確に把握することができ、経営判断を正しく行えるようになります。
簿記では、商品の価格以外の諸費用も明確に記録し、収益と支出を分けることで、正確な財務状況を反映させることが大切です。