ゼロから学ぶ経理入門~その14~ 帳簿の締め切りの基本を徹底解説

ゼロから学ぶ経理入門~その14~ 帳簿の締め切りの基本を徹底解説

ゼロから学ぶ経理入門~その14~ 帳簿の締め切りの基本を徹底解説

 

こんにちは。

簿記の学習を進めていると、「帳簿の締め切り」という言葉が出てきますね。 最初は少し堅苦しく感じるかもしれませんが、実はとても大切な作業です。この記事では、「そもそも帳簿の締め切りって何?」「なぜやる必要があるの?」という疑問に、やさしくお答えしていきます。これから簿記の資格を目指す方も、すでに学習中の方も、ぜひ参考にしてくださいね!

 

1.「帳簿の締め切り」とは?まずは基本を押さえよう!

(1)帳簿の締め切りとは何か?

簡単に言えば、「帳簿の締め切り」とは、一会計期間(たとえば1年)が終わったときに、それまでの記録をきれいにまとめて次の期間に備える作業です。会計期間中は日々の取引を仕訳して、帳簿に記録していきます。しかし、ずっとそのままでは「いまの財産はいくらか」「今年の利益はどれくらいか」が分かりません。そこで、会計期間の終わりに帳簿を締めて、収支をはっきりさせるのです。

帳簿の締め切りを行うことで、次のことが明らかになります。

 ・どれくらいの利益または損失が出たか
 ・資産や負債がどれくらい残っているか
 ・次の会計期間にどんな状態でスタートするか
つまり、「今年1年がどうだったか」を数字で整理する重要な作業なのです。

 

(2)帳簿の締め切りで行う主な作業

では、実際にどんな作業をするのでしょうか?大きく分けると次の2つです。

①損益の締め切り

1年間の収益と費用をまとめて「損益勘定」に振り替えます。これによって、その年の利益や損失を計算できるようになります。たとえば、売上や仕入、人件費などの勘定科目を損益勘定に集めて、「今年はいくら儲かったのか(または損したのか)」を明確にします。

 

②貸借(資産・負債・純資産)の締め切り

現金や売掛金、借入金など、資産や負債に関わる勘定をまとめます。これによって、会社がどれだけの財産を持っているか、どれだけの借金があるかを把握します。これらの締め切り作業を通して、最終的に財務諸表が完成します。

 

(3)難しく考えすぎないで!

簿記の勉強を始めたばかりの方は、「締め切り」という言葉にプレッシャーを感じるかもしれません。ですが、要するに「今年の取引をまとめて、成績表をつくる作業」と考えれば大丈夫です。日々の仕訳の延長にある作業なので、一つひとつ理解しながら進めれば、きっと理解できますよ。

 

2.損益勘定への振り替えをやさしく解説!

簿記を勉強していると、必ず出てくる「損益勘定への振り替え」。 特に帳簿の締め切り時に重要なステップですが、「なぜ必要なのか」「どういう流れで行うのか」がイメージしにくい方も多いかもしれません。今回は、この「損益勘定への振り替え」について、初心者の方でもしっかり理解できるよう、わかりやすく解説します! この記事を読めば、決算仕訳の仕組みがすっきり整理できるはずです。

 

(1)「損益勘定」ってどんなもの?

まず、「損益勘定」とは何かを押さえておきましょう。損益勘定は、決算時に使う特別な勘定科目です。1年間で発生したすべての収益と費用を一度ここに集め、最終的に「会社がどれくらいもうかったのか(または損したのか)」を計算するために使います。日々の取引で使っている売上や仕入、給料などの勘定科目は、それぞれ金額がバラバラですよね。これをひとまとめにして、最終的な成績表をつくるイメージです。

 

(2)なぜ「損益勘定」に振り替える必要があるの?

日常の取引では、「売上」「仕入」「給料」など、それぞれの勘定で取引を記録していますが、決算のときにはこれらをいったん整理して、「会社全体の利益または損失」を計算する必要があります。そのための作業が「損益勘定への振り替え」です。この振り替えによって、次のような効果があります。

 ☆収益と費用がまとめられ、利益が計算しやすくなる
 ☆各収益・費用勘定の残高がゼロになり、新しい年度をきれいに始められる
 ☆決算書(損益計算書・貸借対照表)が作成できる
つまり、「まとめる」「リセットする」「決算書をつくる」の三役をこなしているのです。

 

(3)実際の振り替えの流れ

それでは、実際にどのように振り替えを行うのか、流れを追ってみましょう。

 

ステップ① → 収益を損益勘定へ振り替える

収益科目は、通常「貸方」に残高があります。これをゼロにするために「借方」に記入し、損益勘定に振り替えます。

【例】売上500,000円の場合

 (借方)売上 500,000 / (貸方) 損益 500,000

これで「売上勘定」はゼロになり、金額は損益勘定に集まります。

 

ステップ② → 費用を損益勘定へ振り替える

費用科目は「借方」に残高があります。これをゼロにするため「貸方」に記入し、損益勘定に振り替えます。

【例】給料100,000円の場合

 (借方) 損益 100,000 / (貸方) 給料 100,000

こうして「給料勘定」もゼロになり、金額は損益勘定に集まります。

 

ステップ③ → 損益勘定で利益(または損失)を計算する

損益勘定にすべての収益と費用が集まったら、差額で利益または損失を計算します。

【例】

 ・売上(収益) 500,000円   ・給料(費用) 100,000円
 → 500,000円 − 100,000円 = 400,000円の利益

 

ステップ④ → 損益勘定から「繰越利益剰余金」へ振り替える

損益勘定で算出した利益は、純資産の「繰越利益剰余金」に振り替えます。

(借方) 損益 400,000 / (貸方) 繰越利益剰余金 400,000

これで損益勘定もゼロになり、今年の利益が翌期に繰り越されます。

 

(4)まとめるとこんな流れ!

「損益勘定への振り替え」は、次の流れで行います。

①収益を損益勘定へ振り替える売上などの収益科目をゼロにする
②費用を損益勘定へ振り替える仕入や給料などの費用科目をゼロにする
③損益勘定で利益(または損失)を計算
益勘定から繰越利益剰余金へ振り替える最終的に損益勘定もゼロにし、来期に備える

ポイントは、「収益や費用をゼロにして損益勘定に集める」こと。これでスッキリとした帳簿になります!

 

(5)よくあるミスとワンポイントアドバイス

初心者の方がつまずきやすいポイントは、「どちらに記入するか(借方か貸方か)」です。

☆収益は「貸方」に残高 → 振り替えるときは「借方」
☆費用は「借方」に残高 → 振り替えるときは「貸方」

これを覚えておくと、間違いが減りますよ!また、試験対策としては、仕訳問題をたくさん解いて体で覚えるのがコツです。パターンをつかめば、スムーズに解答できるようになります。

 

3.資産・負債・純資産の締め切りはどうする?

簿記を学習していると、決算の「帳簿の締め切り作業」に必ず出会います。先ほどの記事では「損益勘定への振り替え」について詳しくご説明しましたが、もう一つ忘れてはいけないのが、資産・負債・純資産の締め切りです。これらは「貸借対照表」に載る勘定科目で、収益や費用とは締め方が少し違います。この記事では、「資産・負債・純資産の締め切り」をテーマに、簿記初心者の方にもわかりやすく解説します!

 

(1)貸借対照表の勘定は「次期に持ち越す」のがポイント

まず最初に押さえておきたいのは、損益勘定で扱う「収益」や「費用」は、期末にゼロにしてリセットしますが、資産・負債・純資産はゼロにはしません。なぜなら、これらは次の期にも引き継がれる「会社の財産や義務」を表す科目だからです。たとえば、現金や預金、売掛金、借入金などは翌期でもそのまま残りますよね。これらは次の会計期間にも必要なので、残高をしっかり計算して、「次期繰越高」として引き継ぐ作業を行います。

 

(2)資産・負債・純資産の主な勘定科目

決算時に締め切るべき、貸借対照表の主な勘定科目をまとめます。

☆資産科目(借方残高)現金、普通預金、売掛金、商品、備品など
☆負債科目(貸方残高)買掛金、未払金、借入金など
☆純資産科目(貸方残高)資本金、繰越利益剰余金など
これらの科目は、決算整理後の残高を「次期繰越高」として記載します。

 

(3)締め切りの具体的な流れ

資産・負債・純資産の締め切り作業は、損益の振り替えとは違って「しめ仕訳」はしません。ただし、しっかりとした流れがありますので、順を追って見ていきましょう!

 

ステップ① → 残高を確認する

まずは、それぞれの勘定科目の決算時点での残高を確認します。試算表や総勘定元帳を使って、最終的な金額をしっかり把握しましょう。

たとえば、

 ・現金 → 300,000円   ・売掛金 → 200,000円   ・買掛金 → 150,000円 

というように残高をチェックします。

 

ステップ② → 「しめ印」をつける

次に、勘定口座に「しめ印」をつけます。これは「この期間の記帳はここまでですよ」という意味で、締め切り線や「しめ」マークを記入します。この作業で、当期の記録が完了したことが帳簿上で明確になります。

 

ステップ③ → 「次期繰越高」を記入する

続いて、各勘定科目に「次期繰越高」を記載します。たとえば、現金が300,000円の場合は次のように記入します。

次期繰越高 300,000円

これで、次の会計期間の開始時点でも正しい金額でスタートできます。

 

(4)損益との違いを理解しよう!

ここで改めて、損益科目との違いを整理しておきましょう。

項目 損益科目(収益・費用) 貸借対照表科目(資産・負債・純資産)
期末処理 損益勘定に振り替えてゼロにする 次期繰越高として残高を引き継ぐ
次期への影響 翌期は新たに記録を開始 翌期も残高を引き継ぐ
目的 利益や損失の計算 財産と負債の把握と引き継ぎ

このように、損益科目は「リセット」貸借対照表科目は「引き継ぎ」がキーワードです。

 

4.おわりに

ここまで「帳簿の締め切り」について学んできましたが、いかがでしたでしょうか?
帳簿の締め切りは、単なる作業ではなく、1年間の経営活動をきれいに整理し、次の新しいスタートに備えるための重要なプロセスです。

まず、「損益勘定への振り替え」では、売上や給料などの収益・費用をまとめて、利益や損失をはっきりさせます。この作業で各勘定科目がゼロになり、損益勘定で今年の成績が見える化されます。その後、算出した利益は「繰越利益剰余金」として次期に引き継がれ、会社の財産として積み上がっていくのです。

一方、「資産・負債・純資産の締め切り」では、現金や売掛金、借入金などを正確に集計し、「次期繰越高」としてそのまま次の会計期間に引き継ぎます。これらの科目は会社の財産や借金を表すものなので、リセットするのではなく、しっかりとバトンを渡すイメージが大切です。

簿記の学習を進めるうえで、この「まとめるべきもの」と「引き継ぐべきもの」の違いを理解することがポイントです。試験でもよく問われる部分なので、今回の記事を参考にしながら、ぜひしっかり復習してみてくださいね。
帳簿の締め切りがしっかり理解できれば、財務諸表の作成や決算整理仕訳も自信を持って取り組めるようになりますよ!