従業員を初めて雇う前に知っておきたい!給与計算と社会保険の基礎

従業員を初めて雇う前に知っておきたい!給与計算と社会保険の基礎

従業員を初めて雇う前に知っておきたい!給与計算と社会保険の基礎

 

「初めて従業員を雇うことになったけど、給与計算はどうすればいい?」「社会保険の手続きって何から始めればいいの?」――そんな不安を抱えていませんか?

 

従業員を初めて雇う経営者にとって、給与計算と社会保険の手続きは最も戸惑うポイントの一つです。正しい手続きをしないと、法令違反になったり、従業員に迷惑をかけたりするリスクがあります。

 

本記事では、従業員を初めて雇う前に知っておきたい給与計算と社会保険の基礎知識をわかりやすく解説します。源泉徴収の仕組み、社会保険の加入条件、労働保険の手続きの流れまで、実務で役立つ情報を網羅的にお届けします。

 

2026年の法改正も踏まえて最新情報を反映していますので、初めて従業員を雇う方はもちろん、既存の従業員がいるけど手続きに不安がある方にもおすすめです。ぜひ最後までお読みいただき、安心して労務管理をスタートさせてください。

 

1.給与計算の基本構造

 

① 給与計算の仕組み

 

給与計算は、「支給額 − 控除額 = 差引支給額(手取り)」というシンプルな構造です。

 

支給額の主な項目:

・基本給

・各種手当(役職手当、家族手当、通勤手当など)

・残業代

・賞与(ボーナス)

 

控除額の主な項目:

・社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険)

・源泉所得税

・住民税

・その他(組合費など)

 

給与計算の基本式は単純ですが、各項目の計算は社会保険料率・税率・控除規定が複雑に絡みます。

 

② 源泉徴収の仕組み

 

源泉徴収とは、従業員に給与を支払う際に、所得税を天引きして国に納める制度です。

 

源泉徴収のポイント:

・給与支払時に所得税を天引き

・従業員に代わって会社が国に納付

・納付期限は原則として翌月10日まで

・年末調整で過不足を精算

 

2026年1月から源泉所得税の計算方法が改正され、基礎控除と給与所得控除が引き上げられました。これにより、多くの従業員で月々の所得税額が減少しています。

 

③ 社会保険料の負担

 

社会保険料は、会社と従業員で折半負担します。

 

社会保険料の構成:

・健康保険料:約5%(会社と従業員で折半)

・厚生年金保険料:18.3%(会社と従業員で折半)

・雇用保険料:1.35%(会社0.95%、従業員0.4%)

・介護保険料:1.8%(40歳以上のみ、会社と従業員で折半)

 

給与の約15%が社会保険料として控除され、同額を会社も負担します。

 

2.社会保険の加入条件

 

① 強制適用事業所とは

 

法人の事業所、または常時5人以上の従業員が雇用されている個人事業所は、社会保険への加入が義務です。

 

強制適用事業所:

・すべての法人(株式会社、合同会社など)

・常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所(一部業種を除く)

・農業・漁業・飲食店などは規模に関わらず任意適用

 

強制適用事業所では、条件を満たすすべての従業員が社会保険に加入する義務があります。

 

② 正社員の加入条件

 

正社員として雇用された従業員は、原則として全員が社会保険に加入します。

 

正社員の社会保険加入:

・適用事業所に勤務する正社員は全員加入義務

・パートタイムでも所定労働時間が正社員の4分の3以上なら加入

・試用期間中も加入義務あり

・65歳以上でも健康保険は加入可能(厚生年金は65歳まで)

 

年齢や雇用形態に関わらず、適用事業所の正社員は原則として社会保険加入が必要です。

 

③ パート・アルバイトの加入条件

 

パート・アルバイトも、一定の条件を満たせば社会保険に加入する義務があります。

 

2026年10月からの新基準:

・週の所定労働時間が20時間以上

・2か月以上の雇用が見込まれる

・学生でない(一定の例外を除く)

月額賃金8.8万円以上の要件が撤廃(2026年10月以降)

 

2026年10月からは「106万円の壁」が撤廃され、週20時間以上働く短時間労働者は、収入の多少にかかわらず社会保険に加入します。

 

④ 4分の3基準とは

 

正社員のおおむね4分の3以上の労働時間・労働日数で働く場合、社会保険への加入義務が生じます。

 

4分の3基準の具体例:

・正社員の所定労働時間が週40時間の場合

・パートの所定労働時間が週30時間以上なら加入義務

・所定労働日数が月20日の場合

・パートの所定労働日数が月15日以上なら加入義務

 

企業規模に関わらず、4分の3基準を満たす従業員は社会保険に加入します。

 

3.労働保険の手続き

 

① 労働保険とは

 

労働保険は、労災保険と雇用保険の総称です。

 

労働保険の構成:

・労災保険:仕事中や通勤中の事故・疾病を補償

・雇用保険:失業時の給付や雇用促進事業

 

従業員を1人でも雇ったら、労働保険への加入が義務です。

 

② 労働保険関係成立届

 

従業員を初めて雇い入れた日の翌日から10日以内に、労働基準監督署へ「労働保険関係成立届」を提出します。

 

提出先:

・事業所の所在地を管轄する労働基準監督署

・提出期限:雇用開始の翌日から10日以内

・様式:労働保険関係成立届(様式第1号)

 

10日以内の提出が法律で義務付けられており、遅れると延滞金が発生する可能性があります。

 

③ 概算保険料の申告

 

保険関係成立日の翌日から50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を提出し、概算保険料を納付します。

 

概算保険料:

・前年度の賃金総額を基に算出

・新設事業所は見積額で申告

・年度更新(6月1日〜7月10日)で精算

 

2026年度の雇用保険料率は1.35%に引き下げられています。

 

④ 雇用保険被保険者資格取得届

 

従業員ごとに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

 

提出期限:

・被保険者となった日の属する月の翌月10日まで

・提出先:管轄の公共職業安定所(ハローワーク)

・新規雇用時に毎回提出が必要

 

従業員を雇うたびに提出が必要なため、提出期限を忘れないよう注意しましょう。

 

4.社会保険の手続き

 

① 健康保険・厚生年金保険の加入手続き

 

社会保険の加入手続きは、管轄の年金事務所で行います。

 

必要な手続き:

・健康保険・厚生年金保険適用事業所指定届

・被保険者資格取得届(従業員ごと)

・提出期限:従業員を使用した日の翌月10日まで

 

法人は設立時に、個人事業所は5人以上雇用した時に手続きが必要です。

 

② 保険料の納付

 

社会保険料は毎月納付します。

 

納付方法:

・口座振替が一般的

・納付期限:翌月末日

・会社負担分と従業員負担分を合算して納付

 

保険料率は毎年改定されるため、最新の料率を確認しましょう。

 

③ 2026年10月の法改正

 

2026年10月から社会保険の適用範囲が拡大します。

 

主な改正内容:

・月額賃金8.8万円以上の要件が撤廃

・週20時間以上働く短時間労働者は、収入に関わらず加入義務

・企業規模要件は51人以上(2027年以降段階的に撤廃予定)

 

「106万円の壁」がなくなり、より多くのパート・アルバイトが社会保険に加入します。

 

5.給与計算の実務フロー

 

① 毎月の給与計算

 

毎月の給与計算は、以下の手順で行います。

 

給与計算の手順:

  1. 出勤簿などで労働時間を確定
  2. 基本給・手当・残業代を計算
  3. 社会保険料を控除
  4. 源泉所得税を計算(令和8年分税額表使用)
  5. 住民税を控除(前年の所得に基づく)
  6. 差引支給額を計算
  7. 給与明細を発行

 

2026年1月からは令和8年分の源泉徴収税額表を使用します。

 

② 源泉所得税の計算

 

源泉所得税は、国税庁の税額表を使って計算します。

 

計算手順:

  1. 総支給額から社会保険料を控除
  2. 扶養親族等の人数を確認
  3. 月額表で該当する税額を読み取り
  4. 10円未満を四捨五入

 

2026年からは基礎控除が58万円に引き上げられ、多くの従業員で税額が減少しています。

 

③ 年末調整

 

年末調整は、12月の給与計算時に実施します。

 

年末調整の目的:

・1年間の源泉徴収税額を精算

・扶養控除等申告書の再確認

・過不足を翌年1月の給与で調整

 

従業員から「扶養控除等申告書」を提出してもらい、正しい税額を計算します。

 

6.失敗しやすいポイント

 

① 手続き期限の遅れ

 

労働保険・社会保険の手続き期限は厳守が必要です。

 

遅れによるリスク:

・延滞金が発生

・法令違反になる可能性

・従業員に迷惑をかける

 

雇用開始後10日以内の提出を徹底しましょう。

 

② 社会保険の加入漏れ

 

条件を満たしている従業員の加入手続きを忘れるケースがあります。

 

加入漏れを防ぐには:

・パート・アルバイトの労働時間を確認

・4分の3基準を定期的にチェック

・2026年10月改正後の新基準を把握

 

適用拡大でより多くの従業員が対象になるため、注意が必要です。

 

③ 源泉徴収の計算ミス

 

税額表の使い方を誤ると、源泉所得税の計算が間違えます。

 

よくあるミス:

・旧税額表を使用

・扶養親族の人数を誤カウント

・賞与と給与の計算を混同

 

2026年1月からは必ず令和8年分税額表を使用してください。

 

④ 社会保険料の負担増

 

社会保険料の会社負担分を見落とすことがあります。

 

会社負担の目安:

・従業員給与の約15%

・正社員1人あたり月額数万円

・パートでも加入すれば負担発生

 

採用前に人件費をシミュレーションしておきましょう。

7.経理担当者が知っておくべきこと

 

① 給与計算と経理の連携

 

給与計算は経理業務と密接に関連しています。

 

経理との連携ポイント:

・給与振込の資金繰り管理

・社会保険料の納付管理

・源泉所得税の納付管理

・年末調整の税務処理

 

給与計算ミスは経理全体に影響するため、正確な処理が重要です。

 

② 帳簿への反映

 

給与関連の取引は、適切に帳簿へ反映します。

 

主な仕訳:

・給与手当の支払い:給与手当/現金・預金

・社会保険料の控除:預り金/現金・預金

・源泉所得税の納付:預り金/現金・預金

・社会保険料の会社負担:給与手当/現金・預金

 

経理ソフトの勘定科目を正しく設定しておきましょう。

 

③ 外部委託の検討

 

給与計算を外部に委託する選択肢もあります。

 

委託のメリット:

・専門家に任せられる

・ミスを防げる

・経理担当の負担軽減

 

委託のデメリット:

・費用がかかる(月額1万〜3万円程度)

・社内ノウハウが蓄積されない

 

従業員数や経理体制に合わせて判断しましょう。

 

8.2026年の法改正ポイント

 

① 源泉所得税の改正

 

2026年1月から源泉所得税の計算方法が改正されました。

 

主な改正内容:

・基礎控除:48万円→58万円に引き上げ

・給与所得控除の最低保障額:55万円→65万円に引き上げ

・扶養控除の所得要件変更

・特定扶養親族・特定親族の新設

 

多くの従業員で月々の所得税額が減少しています。

 

② 社会保険の適用拡大

 

2026年10月から社会保険の適用範囲が拡大します。

 

主な改正内容:

・月額賃金8.8万円以上の要件撤廃

・週20時間以上で加入義務(収入不問)

・企業規模要件は51人以上(現状維持)

・2027年以降、段階的に企業規模要件も撤廃予定

 

「106万円の壁」がなくなり、より多くの短時間労働者が社会保険に加入します。

 

③ 雇用保険料率の引き下げ

 

2026年度の雇用保険料率が引き下げられました。

 

2026年度の料率:

・一般の事業:1.35%(会社0.95%、従業員0.4%)

・2025年度は1.45%から引き下げ

 

会社・従業員双方の負担が軽減されています。

 

まとめ

 

従業員を初めて雇う前に、給与計算と社会保険の基礎知識を押さえておくことは非常に重要です。本記事で解説した内容をおさらいしましょう。

 

給与計算の基本:

・支給額 − 控除額 = 差引支給額(手取り)

・源泉徴収は2026年1月から令和8年分税額表を使用

・社会保険料は会社と従業員で折半負担

 

社会保険の加入条件:

・法人は強制適用、個人事業所は5人以上で強制適用

・正社員は原則全員加入

・パート・アルバイトも条件次第で加入義務

・2026年10月から「106万円の壁」撤廃

 

労働保険の手続き:

・雇用開始翌日から10日以内に労働保険関係成立届

・50日以内に概算保険料申告

・従業員ごとに雇用保険被保険者資格取得届

 

失敗しやすいポイント:

・手続き期限の遅れ

・社会保険の加入漏れ

・源泉徴収の計算ミス

・社会保険料の負担増

 

初めて従業員を雇うと、手続きや計算で戸惑うことが多いですが、基本を押さえておけば慌てずに対応できます。特に、2026年の法改正で源泉所得税と社会保険のルールが変わっているため、最新情報を確認することが重要です。

 

もし手続きや計算に不安があれば、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、自社に合った労務管理体制を構築しましょう。

 

従業員を雇うことは、事業成長の大きな一歩です。正しい手続きと適切な労務管理で、安心して事業を拡大させてください!